活版印刷技術黎明期の形態的特徴の変遷から見る書物の表象と読書の様態
Project/Area Number |
18800045
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
情報図書館学・人文社会情報学
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
安形 麻理 Keio University, 文学部, 助教 (70433729)
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Project Period (FY) |
2006 – 2007
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2007)
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Budget Amount *help |
¥2,700,000 (Direct Cost: ¥2,700,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,370,000 (Direct Cost: ¥1,370,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,330,000 (Direct Cost: ¥1,330,000)
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Keywords | 書誌学 / 書物史 / 活版印刷 / 初期刊本 / 聖書 |
Research Abstract |
本研究の目的は、これまで具体的な検証が進んでこなかった活版印刷術黎明期の書物の表象の変化を明らかにすることである。そのため、1)書物の形態の変化の調査、2)その背後にある書物の表象の変化の検討、3)読書の様態からの書物の表象の変化の分析、という三つの課題を設定した。調査対象は書物の表象を高度に具現化していると予想される聖書とし、15世紀に出版された注釈なしのラテン語聖書80点全てを対象に、目録・画像データベース・複写画像・原資料閲覧により調査した。 本年度は、原資料調査によって1)の補足を行うとともに、2)3)の課題について検討した。特に西洋最初の本格的な印刷本であるグーテンベルク聖書が達成した写本の形態の標準化、精緻化という二つの方向性の継承に着目した。その結果、標準化・精緻化は一層進んだものの、一様ではなく、継承されなかった試みもあることが明らかになった。文章構造の視覚的な提示方法としては、最初期には写本の伝統である色が意識されていたが、1470年代後半には中央寄せや空白行の挿入などの配置による提示を行うという精緻化が進んでおり、印刷本独自の発展が確認できた。同時に、巻末のヘブライ人名辞典や、要約、欄外の参照記号など、読者のためのツールが徐々に増え、15世紀末には標準的になっていることがわかった。また、読者によって参照記号や目次が補われている場合も散見された。この変化は、印刷業者、読者の双方が実用的な付加価値を求めたことの反映だと考えられる。 一方、冒頭ページの扱いや木版画装飾の少なさなど、初期刊本全般とは異なる傾向があり、ラテン語聖書は書物の典型というよりは、独自の表象を持っていたのではないかと考えられる。
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)