Budget Amount *help |
¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,430,000)
Fiscal Year 2007: ¥770,000 (Direct Cost: ¥770,000)
Fiscal Year 2006: ¥660,000 (Direct Cost: ¥660,000)
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Research Abstract |
今年度前半は,一致素性とディフォルト形・動詞の屈折パラダイムに関する研究の発展として,日本語動詞屈折形態の研究を行った。日本語動詞は,否定・丁寧さ・法を形態的素性(morpho-logical features)として屈折を示すが,特定の素性の組み合わせにおいて,形態的欠如がおこることを論じた。さらに,それらの欠如が,否定と丁寧さという2つの統語素性(syntactic features)に基づく派生によって生成された別の語彙素のパラダイムによって補われることを議論し,そのうちの1つが前年度の研究で形式化した迂言的屈折形態で捉えられることを示した。この成果は,今年度後半に2つの国際学会で発表した。加えて,日本語動詞はモダリティを素性として,さらなる形態的変化を示すが,その形態が主語の人称との一致関係を見せることがある点に着目し,統語的一致素性としてのモダリティを屈折形態論に取り込んだ研究を行った。人称とモダリティの関係は,いくつかの先行研究でも言及されているが,本プロジェクトの動詞形態パラダイムに組み込むことにより,日本語動詞形態論の包括的なモデルを提示する研究へと発展することとなる。現在,その成果を国際誌へ投稿する準備中である。 今年度の終わりは,プロジェクトの総括として,今まで行った研究を報告書として取りまとめた。語彙機能関数文法の形式的な側面をまとめ,それを理論的基盤に,アイスランド語,ヒンディ・ウルドゥ語における一致,等位構造と一致の関係,アラビア語の性極性の現象と名詞句内の一致などを中心に全4章148頁に渡る大部の研究書となった。幅広い言語を取り上げ,その一致素性の多様性についてまとめた点において言語類型論の観点からも重要な研究であり,それら複雑な現象に対し包括的な形式化を試みた点から,理論言語学においても価値のある成果である。
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