Project/Area Number |
18830052
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Education on school subjects and activities
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
宮内 香織 長崎大, 教育学部, 講師 (00432964)
|
Project Period (FY) |
2006 – 2007
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2007)
|
Budget Amount *help |
¥2,010,000 (Direct Cost: ¥2,010,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,080,000 (Direct Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2006: ¥930,000 (Direct Cost: ¥930,000)
|
Keywords | 分数 / ヴィゴツキー(L.S.Vygotsky) / 文化的-歴史的視座 / 心理的道具 / 構造の法則 / 算数教育・数学教育 |
Research Abstract |
ヴィゴツキーの文化的-歴史的視座に基づけば「人間行動の発達は記号の発達の歴史であり、また記号を用いることによって自らの行動を支配してきた人間行動の歴史でもある」。ここで「記号」とは「心理的道具(人間の心的過程を制御するための人工的な道具)」を意味しており、この道具の制御とこれを介した自らの心理機能の制御が概念形成に関わっている。 またヴィゴツキーは人間行動の特徴である知性において「構造の法則」を重視している。これは、様々な文脈で個々の要素が変化しても構造は全体として作用し続けるというものである。 このような「心理的道具」と「構造の法則」の視点から分数授業を考察し、子どもの分数概念の形成過程へのそれらの関わりについて検討した。 心理的道具は手段と対象の2つの役割を同時に兼ね備えている。ある分数授業において、水の入ったコップを模した紙が配られ、それを折る活動によって分数概念が導入された。この場面では「紙」と「分数記号」のどちらも手段と対象の役割を備えていたため心理的道具であると言える。しかし「紙」は文脈に依存されていたのに対し、分数記号は子どもの概念形成に一般的な文脈をもたらしたため、同じ心理的道具であってもレベルの違いが存在することが示された。 また小学校6年生の授業を観察し、「構造の法則」に基づき以下を検討した(これについては全国数学教育学会第25回研究発表会で発表を行った)。1授業時間の中での垂直方向の算数的活動に関して「具体的な場面→数学的な場面→より広い場面」へと場の広がりが見られたが、数学的な構造は変わらなかった。すなわち「基準量×何倍=比較量」という分数構造は不変で、全体として作用していたが、場が高まるにつれて分数構造を構成する要素はより抽象的なものへと変化していた。しかしながら場を高めるための算数的活動を子ども達自身で導くのは難しく、ここに教師の重要な役割が存在した。
|