Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
本研究は経済格差が拡大しつつあるわが国の現状について世帯主だけを分析対象とするのではなく、家族構造の変化も踏まえ、多面的に分析することを目的としている。本研究では、まず1年目の取り組みとして、世帯主の第一のパートナーである配偶者、特に妻を対象として、アンケートを実施し、その格差に与える影響を子供への教育投資や教育観の違いに焦点を当て行なった。教育投資の差が個人の経済格差を拡大させてきたのか。もし拡大させたとすれば、どれくらいであり、時代とともにその影響度は変化したのか。さらには、教育投資を多く受けた個人とそうでない個人では子供への教育投資には違いが生じていくのか。教育投資の相違が、性別や家族構造によってどれくらいの違いが生じるかを明らかにした。配偶者が世帯所得に与える影響や次世代の教育投資に与える影響、さらにはgenderの違いが格差に与える影響に主眼を置いた。わが国の家計の情報をできるだけ広範囲に収集することが必要であるが、データ収集に際して常に付きまとう問題としては、高額所得者に関するデータの少なさである。家計のデータで、入手できないものに対応するために、近年では、非常に安価で短期間のうちにデータを収集する手段として、ネットアンケート調査がある。この方法を用いた調査でも、高額所得者からのデータはほとんど入手困難であることがわかっている。そこで、年収約1億円以上の日本の富裕層全員(約6000人)に対してアンケートを配布した橘木・森「全国高額納税者調査」等の実績を利用して、必要な範囲で対象者にアンケート調査を実施した。その結果、高所得者の妻は、かなりの高学歴であるだけでなく、夫の親よりも妻の親の方が高学歴の場合が多いことなど、興味深いことがいくつもわかった。教育・学歴と所得の強い関連が示唆される。今後は、貧困層に焦点をあて、貧困と教育・学歴の関連を見ていくこととする。
All 2007
All Journal Article (1 results)
甲南経済学論集 第47巻・第1号(未定)
110006386212