Project/Area Number |
18840006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Condensed matter physics II
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 浩明 東北大, 理学(系)研究科(研究院), 助手 (50431490)
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Project Period (FY) |
2006 – 2007
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2007)
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Budget Amount *help |
¥2,760,000 (Direct Cost: ¥2,760,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,380,000 (Direct Cost: ¥1,380,000)
Fiscal Year 2006: ¥1,380,000 (Direct Cost: ¥1,380,000)
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Keywords | 高温超伝導体 / 光電子分光 / フェルミ面 |
Research Abstract |
本年度は、超高分解能光電子分光装置の整備・改良を中心に研究を進めた。具体的な作業内容としては、(1)装置の高分解能化のための電源系の高精度化、電圧制御系の最適化、(2)極低温化のための試料基盤および熱輻射シールドの改良、(3)試料表面劣化を抑えるためのAl箔紫外光フィルターの設置を行った。これらの改良の結果、高温超伝導体の電子状態を従来よりも精度良くかっ十分な統計精度をもって測定できる装置環境が整った。 上記の作業と並行して、電子型高温超伝導体NCCOおよびPLCCOの電子構造と超伝導機構を明らかにするための光電子分光実験を行った。特に、電子型高温超伝導体における磁気相関と超伝導メカニズムの関係を明らかにすることを目的として、以下に挙げる項目について研究を行い、いくつかの重要な成果を得た。 1)超伝導ギャップ対称性のドーピング依存性 電子型高温超伝導体の超伝導ギャップは、ホール型の単純なd波対称性とは異なる異常な運動量依存性をもつことが明らかにされているが、これがキャリア濃度の変化に対してどのように変化するのかは明らかになっていなかった。電子型PLCCOの最適ドープ、過剰ドープ、極端過剰ドープの3種類の試料について、超高分解能光電子分光による超伝導ギャップ対称性の直接決定を行った。その結果、電子型高温超伝導体はキャリア濃度によってd波とs波という異なる対称性が競合・相転移する興味深い超伝導物質であることを実験的に明らかにした。 2)電子の多体相互作用(準粒子)の起源 シンクロトロン放射光を用いて、電子型NCCOのフェルミ面の軌道依存性の測定を行った。その結果、Cu3p-3d共鳴条件である74.5eVの励起光を用いた場合に、フェルミ面の構造が大きく変化することを見出した。この結果、電子型の超伝導は、電子-電子相互作用によるモット絶縁体における「フェルミ面の強い軌道依存性」の特徴を強く残した状態で発現していることを見出した。さらに、これまで電子型で観測されていなかったバンド分散のkink構造を観測することに成功し、ホール型と比較して明らかに異なるエネルギースケールをもつことを見出した。これにより、kink構造の起源として磁気励起の可能性が高いことを示唆した。本研究結果は、高温超伝導体のフェルミ準位近傍の電子状態が、ドープされたキャリアの種類(電子またはホール)に拘らず、磁気励起と強く結合していることを示す直接的な証拠を与えたと言え、超伝導機構の解明に大きく貢献するものと考えられる。 以上の結果を含めた電子型高温超伝導体の高分解能角度分解光電子分光研究について、いくつかの国際・国内学会で口頭発表を行った。またこれらの機会に学外の理論研究者と議論を行い、実験結果の解釈に関する理解を深めた。
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