Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
シスチン尿症は、腎近位尿細管管腔側のシスチントランスポーターの遺伝的変異によって生じる常染色体劣性の疾患である。日本人のシスチン尿症変異は、欧米人のものとは大きく異なり、欧米人では見出されていないBAT1のC-末端の変異P482L(第482残基であるプロリンのロイシンへの変異)が、日本人症例の約85%を占めている。P482L変異は、トランスポータータンパク質のC-末端細胞内ドメインにあり、基質結合や基質輸送に直接は関与しないと考えられる部位の変異である。これは、この部位でのタンパク質間相互作用が当該トランスポーターの機能活性にとって重要であること、またそのタンパク質問相互作用の障害がP482Lの病態を引き起こすことを示唆している。P482L変異は、輸送体異常症に広く見られる細胞膜への移行障害とは異なり、細胞膜へ出現するにも関わらず機能が消失しているため、この部位に想定されるタンパク質間相互作用は、トランスポーターの細胞膜上での機能維持に必須のものと想定される。そこで、BAT1のC-末端に結合し、P482L変異体には結合しないタンパク質の探索を開始した。まず、エピトープタグ付BAT1とそのP482L変異体を作製し、これらのコンストラクトを培養細胞に安定に発現させた。このトランスポーター発現細胞を界面活性剤にて可溶化後、免疫沈降によりトランスポーター複合体を精製・濃縮した。現在、このサンプルを電気泳動法により分離し、クーマシー染色や銀染色により解析を行っている。今後、BAT1とP482L変異体について異なる結合性を示したタンパク質を分離した後、タンパク質スポットを切り出し、高速液体クロマトグラフィーと質量分析計を組み合わせてタンパク質の同定を行う予定である。