Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
ATMノックアウトマウスの造血幹細胞に於いて、活性酸素の増加とp16^<INK4a>の増加により細胞周期制御が抑制され幹細胞の自己複製能が喪失する機構(申請者の属する研究グループが明らかにしたもの)につき、ATMノックアウトマウス造血幹細胞の解析およびin vitroで活性酸素の増加を再現する系を発展させ、造血幹細胞に於いて老化因子p16^<INK4a>が増加する分子制御機構を詳細に検討した。その結果、in vitroで活性酸素の増加を再現する系に於いて見られたp16^<INK4a>の発現増加は、ATMノックアウトマウス個体の造血幹細胞に於いては顕著でなく、それに対して、老化に際してp16^<INK4a>の発現を増加することが知られる転写因子Ets1/2の発現が著明に抑制されていることを明らかにした。この現象は若年マウスでは見られず老年マウスで特異的に見られ、このことよりATMノックアウトマウス個体の造血幹細胞に於いてはP16^<INK4a>の発現増加による老化がEts1/2の発現抑制により代償的に調節されていることを示唆した。この際、老化に於いてEts1/2をターゲットとして転写を抑制するBmi-1、およびEts1/2の協調因子Idファミリータンパク質の発現には変化がなく、Ets1/2が抑制制御を受ける分子機構について現在更に解析を進めている。このEts1/2による個体老化制御の分子機構については、各分子の強制発現あるいはsiRNAやドミナントネガティブによるノックダウンを用いてgain of function/loss of functionの効果を検証し、ATMノックアウトマウス個体での骨髄移植による造血幹細胞の自己複製能維持や長期再構築能などin vivoに於ける当該分子の役割と各々の分子間の相互関係についての検討を、次年度に予定している.