Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】北海道沿岸地域で鉄鋼構造物は, 塩害と凍害が複合した厳しい環境にさらされている. これまでの申請者による研究により, 凍結融解腐食環境における腐食促進が確認されてきた. これは, 凍結に伴う局所的な濃度上昇による濃淡電池腐食の影響によるものと考えられる. 近年, 大型観光バスにおいて重要部品が腐食する事例がみられ, 特に, 融雪剤を多く使う地域で腐食が著しいことが報告されている. これまでも腐食疲労強度に及ぼす温度の影響に関する報告がされてきたが, 凍結融解環境が及ぼす影響は明らかにされていない. 本研究では, 材料に繰り返し応力が作用することで材料が振幅運動する場合, 静止状態の供試体で生じる局部的濃度差に起因する濃淡電池腐食による腐食の促進が, どの程度影響を及ぼすかについて研究する. これにより凍結融解環境が腐食疲労強度に及ぼす影響の解明を目的とする. 【実験方法】供試体には市販のSUS304(板厚0.5及び1.0mm)を用いた. 熱処理は, 溶接されたステンレス鋼を想定した鋭敏化熱処理を施す. また比較のため, 溶体化処理材を用意した. 疲労試験装置は片振りの曲げ応力を負荷するもので, ひずみ条件として, 全ひずみ振幅を1.1%, 2.5%, 4.8%の3条件とした. 腐食液はJISG0578で規定されている6%第二塩化鉄水溶液を用い, 腐食液の有無による腐食疲労強度の違いを比較した. 温度環境は+20℃恒温と北海道の冬季の温度を模した凍結融解環境として, 腐食液が完全凍結に至る直前の腐食液, すなわち固相と液相が混在する腐食液温度(-4℃)で, それぞれ実験を行った. 【結論】繰り返し曲げ応力を加えた腐食疲労試験により, 次の結論が得られた. 1)静止した供試体では腐食液凍結に伴う局所的濃度の偏りによる腐食の促進がみられたが, 供試体に振幅を与えた場合, むしろ腐食が抑制された. 2)一方で腐食液の温度に比例して, 腐食が促進することが確認できた. 3)したがって凍結融解環境下での疲労強度低下は, すきま腐食の影響あるいは溶存酸素量の多い界面付近での腐食の影響などの別な要因によるものと考えられる. なお研究成果を次の3か所で発表した. 1)2018年9月6日, 秋田大学, 平成30年度機器分析技術研究会 2)2019年3月2日, 北見工業大学, 日本機械学会北海道学生会第48回学生員卒業研究発表講演会 3)2019年3月4, 木更津高専, 第10回高専技術教育研究発表会
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