Outline of Annual Research Achievements |
近年, 競技スポーツでは, 技術や体力面(競技能力)とともに, 精神面(心理的競技能力)が勝敗に影響する重要な要素として注目され, 競技能力の高い選手ほど, 心理的競技能力が高いことが報告されている. 思春期はホルモンの影響により精神的に不安定な時期であることから, 思春期の子供は精神面の適切な制御が難しく, 指導者からの支援が期待される. 支援には精神状態の把握が重要である. 緊張感や不安感といった精神面の感じ方の指標に, 自律神経系の生理学指標を用いたストレス指数があり, 大人を対象とした実験でその有効性が報告されている. また, 精神状態の把握は, 低非拘束・非接触で可能なことが望まれる. 皮膚表面温度は, 他の生体電気信号と比較して, この条件を満たしている. 中でも鼻部皮膚温度は, 自律神経系の反応である交感神経活動を良く反映することが知られている. 本研究では, スポーツの場面での子供を対象とした, 顔面皮膚表面温度を使ったストレス評価法を提案・開発する. これにより, 心理的競技能力向上のための支援, 怪我の予防を目指す. 指標として, 接触型の心電図計を用い, 心拍からストレス指数を解析し使用する. 検討の際, 質問票による聞き取り調査により, 個々の精神面の感じ方を把握する. 特に競技者が感じる適度な緊張感は集中力を高める効果があるため, ストレス指数の解析結果の定量的数値との関係を調査する必要がある. 精神的ストレスによる心拍数上昇の検討結果から, ストレスの増加する競技本番前のウォーミングアップ時ストレス指数と聴き取り調査結果には相関が見られ, 心拍変動を用いてスポーツにおける思春期の子供の緊張感把握の可能性が確認できた. 「あがり」にともなう動作精度の低下についても心拍変動から把握できる可能性が確認できた. また, ストレスの増加する競技本番前のウォーミングアップ時の顔面皮膚表面温度についても, 変化が見られた. 今後, 顔面皮膚表面温度を使ったストレス評価法を提案するため, 更に検討する必要がある.
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