Outline of Annual Research Achievements |
本研究は, 地域再生と統合された気候エネルギー対策が活発なオーストリアの中小規模自治体を対象に, その成立・促進要因を解明する目的で事例調査を実施したものである。具体的には, 既往研究が少ない南東部のシュタイヤーマルク州, ケルンテン州を中心に, 同国のエネルギー自治体認証制度「e5」等に参加し, ローカルアジェンダ21などを活用したボトムアップの地域づくりに取り組む中小規模自治体, 及びそれらを支援する州レベルの推進組織・関係機関等を2018年8~9月にかけて訪問し, ヒアリング調査を行った。その結果, 気候対策の住民利益としての認識, 政治的リーダーシップ, 手厚い住民参加プロセス, 気候エネルギー対策専門支援組織の存在, 連邦・州レベルの段階的な支援政策等を共通要素として抽出することができた。これらは, 過去の同国他州における事例研究とも概ね一致しており, 同国の地域気候政策を支える共通の社会基盤であると考えられるが, 新たに州レベルの住民参加専門支援組織の活動や, 条件不利地における長期にわたる内発的な対話プロセス, 効用等を確認することができた。 また, 同国の気候政策の主要課題であり, 地域主導の対策が困難な交通分野に関し, 地域交通維持のメカニズムを把握する目的でケルンテン州運輸連合の事例調査を実施した。そこからは, 連邦・州・自治体間の政策協働と役割分担, 青少年育成等他分野との政策連携, 交通政策と市場経済をつなぐ中間システムとしての機能等, 交通分野においても地域・社会課題の同時解決に向けた統合的なガバナンスの存在を確認できた。 これらの知見は, 比較的低調な我が国の中小規模自治体の気候政策を動機づけていくうえで有用であり, 今後, 法に基づく地球温暖化防止活動推進センターへの地域政策支援機能の実装等を検討していく予定である。
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