大学と社会――19世紀中葉以降のアメリカ大学小説から現代を逆なでに読む
Project/Area Number |
18K00375
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
大野 瀬津子 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (50380720)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2022: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2021: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2020: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2019: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2018: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | 大学小説 / 大学 / 雄弁術 / 監獄 / 南北戦争小説 / 大学論 / アメリカ文学 / 19世紀 / 南北戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.『ボストンの美女』(1844)、『ネリー・ブラウン』(1845)についての論考が『九州地区国立大学教育系・文系研究論文集』(9巻1号)に掲載された。同論文「ハーヴァードの雄弁家たち――19世紀前半アメリカの大衆小説と大学の講義」では、19世紀前半のハーヴァードを舞台とする『ボストンの美女』と『ネリー・ブラウン』が大学で磨いた雄弁術を生かして法律家になる若者を描いている点に注目し、当時のハーヴァードで修辞学・雄弁術を教えていたエドワード・ティレル・チャニングの講義録と比較した。チャニングの講義録は法廷弁論における道徳的目的の大切さを説くが、雄弁術の悪用に関する説明はしていない。対して両小説は雄弁術を道徳的目的で実践した若者の法律家としての自立のみならず、それを非道徳的目的に悪用した若者の惨めな末路も活写している。よって、両小説は雄弁術を悪用すると不幸になるという教訓を継ぎ足し、大学の雄弁術教育を補完している、と結論づけた。 2.『更生した学生』(1844)についての論考「大学から監獄へ――19世紀前半アメリカの大衆小説におけるモラル教育」が、『九州工業大学教養教育院紀要』(7号)に掲載された。同論文では、19世紀前半のブラウン大学を舞台とした『更生した学生』が、ピューリタンの巡礼の舞台として大学を表象する点では当時の言説を反復するにすぎないが、内省の場として機能しない大学を、内省・更生を促進する監獄の独房と対比させ、モラル教育機関としての大学の退潮と教育施設としての監獄の誕生を見通している点で、画期的なテクストであることを明らかにした。 3.異なる専門分野の研究者と知見を共有する試みとして、所属大学の同僚(中国の留学生政策を専門とする李昱教員、アメリカ外交史を専門とする八丁由比教員)との研究会で研究内容を報告し、貴重な意見をもらった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
家族の病気や自宅の引っ越し等の事情で『二人の学友』(1871)について論文にまとめることができず、またコロナ禍の影響で国際学会の発表や専門家と一般市民がともに考えるイベントも開催することができなかったため、「やや遅れている」と判断した。しかし、予定通り、『ボストンの美女』、『ネリー・ブラウン』、『更生した学生』についての考察を論文化でき、さらには異なる学問分野を専門とする同僚たちと研究会を開催できたことは収穫であった。次年度は本研究の最終年度となるので、これまでの研究の締めくくりとなる論考を国際学会で発表し、市民参加型のイベントも開催したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は本研究の最終年度であるため、これまで積み重ねてきた研究の成果を以下の形で公表する。 1.主として南北戦争前に出版されたキャンパスを舞台とする小説群(『ファンショー』、『ボストンの美女』、『ネリー・ブラウン』、『更生した学生』)を、大学の社会的意義を問う小説の系譜としてまとめ、国際学会で口頭発表する。 2.異なる学問分野を専門とする複数の専門家を招き、一般市民とともに、知とは何かを考えるイベントを開催する。 3.異なる学問分野を専門とする同僚との研究会を継続開催し、本研究の成果を発表して意見してもらうとともに、他の研究分野への理解を深める。
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Report
(5 results)
Research Products
(6 results)