Project/Area Number |
18K00382
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02030:English literature and literature in the English language-related
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
松井 優子 青山学院大学, 文学部, 教授 (70265445)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2019: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2018: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
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Keywords | 英文学 / 歴史小説 / 文化史 / ウォルター・スコット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ウォルター・スコットの歴史小説群『ウェイヴァリー叢書』の19世紀における正典化の過程やそれに対するモダニズム期の戦略的応答、21世紀における生誕記念行事等の検討を通して、スコットや歴史小説の文化的役割や文学史における位置づけについて考察している。2023年度は、19世紀後半から20世紀前半にかけての代表的な英文学入門書や文学批評を対象に、19世紀末の英語読者層の増大と多様化ないし階層化にともない、文学作品の大衆性と芸術性との分化が意識されていく傾向にあった一方、世紀転換期の「英文学」や文学批評が、高等教育の科目とその教授法として作品内容や登場人物への論評から作品技法や作家の創造性の分析、評価へとその性格や力点を変化させていくこと、それらが、19世紀中にすでに一定の評価、分析方法が確立していたスコットの受容や、広く歴史小説という、歴史学や歴史書と近接し史実と虚構が共存するハイブリッドな特性を持つジャンルの「創造性」、「芸術性」の評価や研究手法に与えた否定的な影響について検討した。あわせて、その検討のための資料の一部として、同時期に数多く出版され一般的な流行をみせていた歴史小説全般の特徴やその受容の実態について把握するため、19世紀末から20世紀前半にかけての歴史小説の案内書やガイドを整理、分析する基本的な作業を進めた。 また、生誕250周年記念行事では回顧的というよりむしろ未来を志向し、モダニズム期以降は単なる「ストーリーテラー」として創造性の乏しさを指摘されることが多かったスコットやそのストーリーテリングを現代的視点から再評価しようとする動きが確認されたが、そうした試みの一環として、史実や正史を提示しつつなお複数の歴史の視点を確保しようとするスコットの歴史小説の語りの手法や創造的工夫について分析し、関連の学会で発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関連資料に関する国外調査が実施できなかったことや、19世紀末から20世紀前半にかけて出版された歴史小説案内書やガイド等の整理や調査、分析に引き続き多くの時間と労力を必要としていること、また、そのために生誕250周年記念をめぐる資料とその関連文献の選定、検討に影響が出ていることが主な要因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、引き続き19世紀末から20世紀前半にかけて出版された歴史小説の案内書やガイドを参照し、この時期に出版された歴史小説作品の全体的な傾向、想定読者層、これら案内書やガイドが提示しているこのジャンル内部での分類・細分化の方法や方針等の把握に努める。あわせて、そこでの『ウェイヴァリー叢書』の解説や評価、『叢書』とそれ以外の歴史小説作品や他の文学ジャンル作品との関係の提示方法について、モダニズム期の文学批評の主要な傾向と比較しつつ整理、分析し、歴史小説が小説ジャンル全体の地位の向上に貢献した19世紀での文化的権威から、20世紀前半には言わば小説の一サブジャンルと化し、歴史小説としての技法の分析の断絶も含めてその後の批評的空白につながっていく可能性について検討する。 また、モダニズム期以降のスコット受容を歴史化、相対化する試みの一環として、生誕250周年記念行事における新たな分析観点の導入とその後の展開を確認する作業を進める。それらが提示する現代的、未来志向的な態度を参照しつつ、こうして相対化された視点から、『叢書』における歴史的視座をふまえた問題意識や小説技法について考察する。これにより、モダニズム期以降主流となった力点の一つとして時に『叢書』受容を内部で分裂させてきた文化的アイデンティティ等からの読解以外に批評的射程を拡大し、歴史小説というジャンルの現代的意義の認識や理解の促進に努める。 以上を通じ、モダニズム期から20世紀後半にかけてのスコットや『叢書』受容の転回の具体的性格や文学史的意義、歴史小説のジャンル的特性についての理解を深めるとともに、現代的な問題意識との接続の試みを通した21世紀における歴史小説受容の「再転回」の可能性について検討を進める。そのため、関連の学会に参加するとともに、関連資料を調査、収集する予定である。
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