啓蒙思想における「異常者たち」―「去勢者たち」をめぐる文学的哲学的総合研究
Project/Area Number |
18K00489
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02040:European literature-related
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
桑瀬 章二郎 立教大学, 文学部, 教授 (10340465)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥2,210,000 (Direct Cost: ¥1,700,000、Indirect Cost: ¥510,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2019: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2018: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
|
Keywords | モンテスキュー / ヴォルテール / ルソー / 啓蒙思想 / セクシュアリティ / 精神分析学 / フランス哲学 / フランス文学 / ジャン=フィリップ・ラモー |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年は、令和3年段階で明確化した研究計画の全体像をもとに、その完成に向けた作業を進めた。その全体像とは次のようなものであった。①「宦官」の表象の象徴例としてモンテスキューの『ペルシア人の手紙』の分析から出発し、②17世紀まで遡るかたちで啓蒙期の「カストラート」論を分析した後、③いわゆる歴史叙述の検討から「去勢者たち」をめぐる歴史的記述を再検討し、④ビュフォン、ディドロを中心とする博物誌的、生理学的、哲学的視点からの分析へと進み、⑤最後に①~④を18世紀フランスの代表的思想家の生/性の表象(特に伝記的言説と自伝的著作に注目する)と関係づける、というものである。 この作業のほかに、当初対象外としていた二つの側面についても研究を進めた。ひとつは、イスラームの表象である。近年日本でもイスラーム研究が急速に進んでいるが、それらの参照しつつ、モンテスキューらフランス啓蒙の知識人たちによってイスラームがいかに歪められ、それがいかに我有化されたかについて調査した。もうひとつは「去勢者たち」をめぐる歴史的記述における、俗にいう「オリエンタリズム」の影響の再検討である。そのさい、トマ・ピケティの『資本とイデオロギー』(2019年)のような一見「オリエンタリズム」とは無縁の、だが、その今日的形態について示唆的な研究を参照した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2年、3年の「実施状況報告書」で記した④の作業、すなわち、「ビュフォン、ディドロを中心とする博物誌的、生理学的、哲学的視点からの分析」を中心に、全体に大きな遅れが出ている。この領域については近年欧米で多くの注目すべき研究が発表されており、それをどのように本研究につなげるかについて迷いが生じた。また、「研究実績の概要」に記したように、当初対象外としていたイスラームの表象と「オリエンタリズム」の諸問題にも研究対象を広げたため、進捗が遅れた。例えば18世紀フランスにおける「オリエンタリズム」の影響を扱うさい、アントワーヌ・ギャランによる『千夜一夜物語』の「翻案」(1704年)の決定的影響は避けて通れない課題であることが理解できたが、近年、この点についても欧米で無数の研究が発表されており、これらをいかに本研究に組み入れるかについて、困難に直面した。しかし、以上のような迷いや迂回が最終的に、本研究を実り豊かなものとしてくれるものと確信できた。 令和4年こそエコール・ノルマル(もしくはコロンビア大学)図書館での集中的な研究調査が行う予定であったが、諸般の事情、とりわけ健康上の理由から、この研究調査を行えなかった。またこれが国内での研究の遂行にも大きな障害となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度の[現在までの進捗状況]に次のように記した。「特異な状況の中、本研究を遂行するために必要となる資料を準備する作業を進めた。そのため、文献類は揃いつつある。仮に予定していたエコール・ノルマル(もしくはコロンビア大学)図書館での集中的な研究調査が行えなくとも、研究計画の全体像を大きく変更することなく、成果としてまとめらると考えている。」 進捗が遅れている箇所(とりわけビュフォンとディドロの諸著作の分析)とその理由は明確であるため、その箇所について今後、集中的に作業を行う予定である。ただし、令和4年度に進めたイスラームの表象と「オリエンタリズム」の諸問題についての研究も、最終成果に反映させることができるよう、さらに調査を進める予定である。担当医と相談しつつ、可能な限りこれらの作業に専心したい。
|
Report
(5 results)
Research Products
(7 results)