日韓両国における中国短編白話小説の受容様相比較研究
Project/Area Number |
18K00510
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 02050:Literature in general-related
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
金 永昊 東北学院大学, 教養学部, 教授 (60712031)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2018: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
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Keywords | 白話小説 / 今古奇観 / 古今小説 / 中村庄次郎 / 夢決楚漢訟 / 都賀庭鐘 / 三言二拍 / 西漢演義 / 三国志演義 / 英草紙 / 漢楚軍談 / 近世文学 / 翻案 / 江戸文学 / 朝鮮文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでコロナ禍のため、国外はもちろん、国内の出張はかなり制限されていた。2022年度の後期になってようやく出張に行くことが出来るようになったが、昨年12月の出張の成果はまだ学会発表及び論文投稿をする段階に至っていない。したがって、報告できるような研究実績はほとんどなく、その代わりにコロナ禍以前に集めておいた資料の研究を行っていた。そのうち、東京大学小倉文庫所蔵本『今古奇観』の訳注を行っていたので、その概要について簡略に紹介させていただきたい。 『今古奇観』は抱甕老人(伝未詳)によって編纂された明代末の短編小説集で、「三言二拍」から40編を選び刊行されたものである。『今古奇観』が日本近世文学に及ぼした影響については広く知られている通りだが、韓国においても朝鮮時代末期から庶民文学の発達により、その素材源としてかなり多く活用された書物である。 筆者が訳注を施している小倉文庫所蔵本『今古奇観』は、対馬の通事中村庄次郎(1855~1932)が朝鮮語訳を施したもので、中国の文学作品を日本人が朝鮮語訳したという点で非常にユニークな書物である。東京大学小倉文庫には、中村庄次郎が寄贈した5種の刊本と26種の写本が所蔵されているが、そのうち、『今古奇観』は48ウに「紀元 二千五百卅六年 明治丙子 十一月 中旬於草梁公館謄写 中村庄次郎」とあることから、1876年の21歳の時に釜山の草梁公館で翻訳をしたことが分かる。そして、49ウには「中村庄次郎翁より寄贈 昭和七年八月 進平」とあるので、昭和七年(1932)に中村が小倉進平に寄贈したことが分かる。 これまで本書は、主に朝鮮語学的な観点から、江戸時代に作られた朝鮮語学習書の一部として検討が行われて来た。しかし、原話との比較対照による中村訳の質及び独自性については全く研究が行われていないので、今回の研究の意義は非常に大きいと言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまではコロナ禍のため、資料調査のための出張がなかなか出来なかったため、進捗状況は「やや遅れている」と評価することが出来よう。では、以下、現在までの進捗状況について、簡単に述べていきたい。 小倉文庫所蔵本『今古奇観』は中村が21歳の時に執筆したもので、「両県令成婚事」「八銀人」「洞庭紅」の3話が収録されている。本書は、「両県令成婚事」は『今古奇観』第2話「両県令競義婚孤女」を比較的忠実に翻訳したものであり、「洞庭紅」は『今古奇観』第9話「転運漢巧遇洞庭紅」を抄訳していることが知られている。そして、「八銀人」は『今古奇観』のどの話を翻訳したかは不明で、今後、その典拠を探す作業が必要である。 現在のところ、「両県令成婚事」と「洞庭紅」の両話の訳注及び原話との基本的な比較対照は終了しており、次の段階として「八銀人」の訳注の作業に取り掛かっている。本書を通読した結果、いくつかのところで中村の独創性を見出すことが出来る。例えば、「両県令成婚事」を例にすると、原作では、主人公が「落于下賤(間違いなく賤しい身分になるであろう)」と、具体的にどのような身分に転落するかが記述されていない。しかし、中村翻訳本では、「私の体を買い取って連れて行き<中略>間違いなく大きな侮辱を受けるであろう(筆者訳)」と、遊女として売られ、貞節を失うことを暗示する内容に変わっているなど、随所にわたり小説的な表現が見受けられる。また、原作の白話文を理解しないとうまく翻訳できないような訳文が見られ、中村は朝鮮語だけでなく、中国語に関しても正確に理解をしていたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、本研究課題の最後の年として、次の二点に重点を置いて研究を行いたい。まず、一点目としては、小倉文庫所蔵本『今古奇観』についての訳注を完成し、学会発表及び論文執筆を行いたい。そして、訳注の成果に関して、簡単な報告書を出したい。二点目としては、昨年の12月に韓国国立中央図書館で複写をした『諺漢文今古奇観』について分析を行い、翻訳の質及び作者の創作性などについて考察を行いたい。
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Report
(5 results)
Research Products
(5 results)