子育て支援推進下における育児休業をめぐる紛争の構造と過程
Project/Area Number |
18K02416
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 09020:Sociology of education-related
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
東野 充成 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (90389809)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2020)
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Budget Amount *help |
¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2019: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
Fiscal Year 2018: ¥390,000 (Direct Cost: ¥300,000、Indirect Cost: ¥90,000)
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Keywords | 育児介護休業法 / 子育て支援 / 男女雇用機会均等法 / 育児休業 / 男女共同参画 / 性別役割分業 / 労働紛争 / 言説研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、子育て支援の推進が謳われる中で、妊娠や出産、育児を理由として不利益な処分が科された事件を分析することを通して、現代社会における育児休業や女性の働き方といった言説の布置を明らかにすることである。本年度は、広島中央保健生協事件を対象に、育児休業という制度や言説が、どのような意味をもつのかを分析した。 広島中央保健生協事件は、妊娠中に軽易な業務に転換されたが、育児休業終了後も役職に復帰されなかった処分をめぐる争いであり、同最高裁判決は、男女雇用機会均等法の強行規定性を肯定した点などにおいて、理論的・実務的に重要な意義が認められる判決である。労働をめぐる環境や制度等に不満を持つ人がどのようなレトリックを用い法人に抵抗したのか、それに対しどのような反論や判断がなされたのか、広島中央保健生協事件の一連の判決をテクストとして読み解いた。 その結果、育児休業に対立する概念として、人事裁量権が浮かび上がった。同事件の一審判決、二審判決ともに、使用者側の人事配置上の必要性を認め、従業員側の敗訴という判断を示した。言い換えれば、人事裁量権という労働法の概念上の強固な基盤の上に、男女雇用機会均等法や育児介護休業法の言説は力を持たなかったということである。一方で最高裁判決は、こうした言説の力関係に楔を打ち込んだ。つまり、妊娠や出産等に伴う不利益取扱いを、人事裁量権という極めて強い包括性をもった権限に勝るほどのものとして位置づけたわけである。ここには、労働の世界において、人事裁量権が社会の言説を取り込む中でその重みを引き下げるとともに、育児や子育てがその重みを引き上げる構造的な変容の過程を見出すことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに分析は進んでいるが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、相次いで発表を予定していた学会が中止された。そのため、分析結果をまとめた論文等を発表する機会が2020年度はほとんどなかった。 2021年度は、これまでにまとめた分析結果を、通常開催される学会やオンライン開催の学会、また紀要等で報告する予定にしており、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の新型コロナウイルス感染症拡大の影響で発表できなかった論文について、順次学会において口頭発表を行う(オンライン、オンデマンド発表を含む)。同時に、これまで分析してきた事例に、新たな事例を加えて分析した論文をまとめ、学会誌、紀要等の媒体において論文として公刊する。
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Report
(3 results)
Research Products
(7 results)