Project/Area Number |
18K03659
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 15010:Theoretical studies related to particle-, nuclear-, cosmic ray and astro-physics
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Research Institution | Kyoto University (2019-2023) Kyoto Sangyo University (2018) |
Principal Investigator |
九後 太一 (汰一郎) 京都大学, 基礎物理学研究所, 特任教授 (00115833)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥4,030,000 (Direct Cost: ¥3,100,000、Indirect Cost: ¥930,000)
Fiscal Year 2021: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2019: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2018: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
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Keywords | 宇宙定数 / スケール不変性 / Weyl重力理論 / 2次重力理論 / 複素ghost / ユニタリ性 / Weyl 重力理論 / complex ghost / ユニタリティ / unimodular gravity / Einstein gravity / Faddeev-Popov ghost / ゲージ固定 / de Donder ゲージ / 反対称テンソルゲージ場 / ワイル不変性 / Einstein-Hilbert項 / R2乗重力理論 / 重力子 / ダイナミカルな対称性の破れ / 南部-Jona-Lasinio模型 / ディラトン場 / 真空エネルギー / 宇宙定数問題 / 自発的対称性の破れ / Higgs場 / 南部--Jona-Lasinio模型 / Higgs場の凝縮 / Einstein重力 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年(2023)年度は、昨年度より始めた局所スケール不変なWeyl重力理論を初めとする曲率の2次項を含む2次重力理論(Quadratic Gravity)についての研究を継続し次の明確な結果を得、富山大/Max PLanck研の久保治輔氏と共著の論文を発表した。 2次重力理論では、重力場は通常のmassless成分場とmassive成分場に分離でき、後者のmassive成分場が負計量のghost場であるため、理論の基本的整合性のユニタリ性を破ることが大問題であった。これに対し、T.D.LeeとWickはmassive成分場の質量が、軽い物理的粒子への崩壊のため複素数になることに注目し、物理的粒子だけの散乱過程では、複素エネルギーを持つ複素ghostはエネルギー保存則から決して生成されずユニタリ性が成り立っている、と主張していた。 我々は、この物理的粒子の散乱で複素ghostが生成される過程を場の理論の基本に立ち戻って子細に調べ、複素ghostが(負の)有限確率で生成されることをあらわに示した。ポイントは複素エネルギーがある場合のエネルギー保存を表す超関数「複素デルタ関数」の扱いにあり、Feynman図の各頂点で無意識的に4元運動量保存を使うFeynmanルールも、複素ghostが生成されないというLeeの計算も、そこで間違っていることを明瞭に指摘した。 一方、未だに「複素ghostは不安定であり、最終的には軽い物理的粒子に崩壊して無くなるので、ユニタリー性は成り立つ」と主張する研究者がいる。これに対しても我々は、「一般に負計量粒子は、正計量の軽い粒子達に`崩壊'すればする程、逆にその負の存在確率(の絶対値)が大きくなる」こと、従って「反-不安定性」とも言うべき超安定性を持つことを、負計量場の2点関数に対する分散関係式に基づいて証明し、その論文が最近掲載決定となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年2022年度は、昨年度から始めた、局所スケール不変なWeyl重力理論などのくり込み可能な高階微分の2次重力理論(Quadratic gravity)が、一般に「量子論としてユニタリーな完全な理論か」ということを調べる研究を継続した。高階微分の重力場に含まれるmassiveな負計量粒子は量子補正で複素質量を持つ複素ghostになるので、エネルギー保存則から物理的粒子の散乱過程では生成されない、との昔のT.D.Lee主張を詳細に検討したが、残念ながら、正計量の物理的粒子だけの散乱過程で負計量の複素ghostは生成される、ということが証明されてしまった。今年度はこの証明の詳細を与える論文を日本物理学会のPTEP誌に発表し、続いて、「複素ghostは不安定だから最終的には漸近場として現れない」という最近でもくり返し現れる間違った主張を疑問の余地無く論破する論文を書き、掲載決定になった。これらの論文は、否定的な内容ではあるが、明確な結論を与えるもので、今後の紫外完全な重力理論構築に向けて進むべき方向を示唆する重要な論文としてPTEP誌のEditor's Choiceにも選ばれた。 しかしながら、この科研費の研究課題本来の目的である「ゼロの宇宙定数ないし平坦時空が力学的に選ばれる」という機構の解明には一歩も近づいていないので、やや遅れている、とした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、スケール不変性自体は、それだけでは宇宙定数をゼロにする力学的機構としては役立たない事が明らかになった。さらに局所スケール不変なWeyl重力理論等の2次重力理論が、紫外完全な量子重力理論である可能性も少なくとも摂動的領域では無いことが明らかになり、この科研費の研究課題本来の目的である「ゼロの宇宙定数ないし平坦時空が力学的に選ばれる」という機構の解明は、益々難しくなった。 しかし、翻って考えるに、ここ数年の研究で明らかに出来たことは、紫外完全な量子重力理論として2次重力理論という方向は正しくない、ということであり、今後の研究方向は、むしろ高階微分を含まない元々のEinstein重力理論(ないしはその超対称化版の超重力理論)だろうということを示唆しているように思える。 実際我が師の中西襄先生は、Einstein重力理論は非摂動論的にはwell-definedだと主張されており、これはまた、Einstein重力の有効結合定数が紫外領域で有限な固定点に近づくといういわゆるasymptotic safetyの考え方にも近い。今のところこれらのアイデアは主に重力場だけを考慮して議論されているが、私は、重力場だけでなく大統一理論での物質場なども取り込んで同時に考える必要があると思う。何故なら、ちょうど標準理論がクォークとレプトンの両方を考慮して初めて整合的であったように、量子重力理論の整合性は、世界に存在する物質の場、力の場全てが現在あるようにある場合にのみ成り立っている、と思うからである。 今後、特にこの科研費の最終年度は、こういう観点から紫外完全な量子重力理論を探求する研究をしたい。その中から当初の期待である「宇宙定数を消す力学的機構」が発見される可能性も依然として存在すると思う。
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