海洋プランクトン幼生の成長:摂餌の消化・吸収と栄養素の伝播・受容
Project/Area Number |
18K05829
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 40040:Aquatic life science-related
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
金子 洋之 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 名誉教授 (20169577)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉石 立 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 准教授 (60195526)
古川 亮平 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 助教 (90458951)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2020: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2018: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
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Keywords | イトマキヒトデ / ビピンナリア幼生 / サイズ依存性 / 成長 / 形態形成 / ブラキオラリア幼生 / 摂餌 / 海洋性プランクトン / 棘皮動物 / 発生シフト / TGFb / アポトーシス / アスタチン族メタロプロテアーゼ / 消化システム / ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体 / 神経システム / 温度感受性チャネル / 神経ネットワークの崩壊 / 海洋プランクトン / ヒトデ / 神経 / メタロプロテアーゼ / ヒストン / ヒトデ幼生 / 凝縮 / サイズ / 神経回路 / プランクトン幼生 / 栄養循環 / 神経系 / マリンバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
東京湾で採取してきた棘皮動物イトマキヒトデ を研究室で飼育し、媒精後に第1回目と2回目の卵割が生じた時点で、小口径のマウスピペットを通過させることにより受精膜を除去し、割球間接着を解除させ、1/2ならびに1/4割球を得た。同時に接着を解除しない1/1割球(実験対照)も並行して、これらの分離割球サンプルの発生を進行させたところ、同調したタイムコースを辿り、胞胚期、原腸胚期の形態形成を経て開口し、サイズが異なった正常な形態のビピンナリア幼生になった。次に、投餌下で、実験対照と分離割球サンプルは、全てブラキオラリアに特徴的な種々の腕形成や成体骨片、成体原基を形成したが、そのタイミングは互いに異なっていた。具体的には、実験対照、1/2割球由来ビピンナリア幼生、1/4由来割球由来ビピンナリア幼生の順で、ブラキオラリア幼生への形態形成が早く開始された。逆にいえば実験対象と比べ、1/2や1/4割球由来の小さなサイズのビピンナリア幼生は、遅れたタイミングでブラキオラリア幼生への形態形成を開始する。この形態形成が開始される時期におけるサイズを詳細に解析した結果、全てのサンプルがブラキオラリアへの形態形成を開始するのは同様なサイズであることが見出された。また餌を与えない状態での飼育では、実験対照も含め全てのサンプルはブラキオラリア幼生への形態形成を開始しなかった。これらの結果から、摂餌することにより、全ての分離割球は、そのビピンナリア養成課程で、サイズ依存性の、言い換えればサイズを調整しながら、ブラキオラリア幼生に成長することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本申請のテーマである「海洋プランクトン幼生の成長:摂餌の消化・吸収と栄養素の伝播・受容」において、棘皮動物イトマキヒトデ を材料に、そのビピンナリア幼生の成長特性を明らかにした論文を公表できた。これにより、海洋中で漂泳するプランクトン幼生は、餌を摂る以前の母性栄養で育っている胚期には、その発生プログラムを迅速に遂行することをやっており、いったん摂餌し始めると、変態期に向けて時間をかけてでもジックリと形態形成を行うことが推測できるようになった。変態後には時間をかけて次第に成長していくが、生殖可能な成体期に向かう上で、幼生期はサイズを担保しながらの成長といった発生時期であることの重要性が浮かび上がった。 幼生成長期にはサイス増加が当たり前のように生じていると考えがちであるが、そこには変態期に向かうためのサイズ調節、あるいは特定的なサイズで表出されるためのメカニズムの存在が示唆される。これは本申請の目的である海洋プランクトン幼生について新たな発見を含む大きな一歩となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、研究テーマで明らかにする項目として挙げている摂餌の消化・吸収について、今後発展が大いに期待される分子・細胞レベルでの現象を見出しており、本申請の期間中に、現在取得しているデータを公表するための論文作成を行う。具体的には、細胞内輸送に関与することが知られているクラスリン分子について、本研究の材料であるイトマキヒトデ から単離できており、モルフォリノオリゴを用いたタンパク質の翻訳抑制を行うと、摂餌後に胃の崩壊が生じるという現象である。最初に予想していたのは、摂餌が不可能になり、ブラキオラリア幼生への成長が単に停止するということであった。しかしながら、成長停止という現象を遥かに超えた尋常ならざる表現型が誘出されており、成長メカニズムの骨格をなす消化・吸収のメカニズムの制御実体を示唆する論文を作成する。 また、成長するイトマキヒトデ 幼生の細胞性成分は上皮細胞の細胞分裂により生じているが、もう1種の細胞成分である間充織細胞が上皮細胞の分裂増殖を担っていることを以前の研究で既に明らかにしていた。最近、間充織細胞の上皮細胞増殖誘起の機能について、潜在型TGFβの活性化を介して増殖を行っていること、ならびに間充織細胞が増殖誘導だけでなく上皮細胞のアポトーテックな細胞死を抑制していることを示す実験データを得ている。これらを論文に発表することで、ヒトデ 幼生の成長をより深く理解できるための一里塚となることを目指す。
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Report
(5 results)
Research Products
(4 results)