ヤドカリの殻交換は捕食リスクに便乗した感覚トラップにより促進される?
Project/Area Number |
18K06416
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 45040:Ecology and environment-related
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
古賀 庸憲 和歌山大学, 教育学部, 教授 (50324984)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉野 健児 国立水俣病総合研究センター, その他部局等, 室長 (40380290)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2020)
|
Budget Amount *help |
¥3,900,000 (Direct Cost: ¥3,000,000、Indirect Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2018: ¥1,690,000 (Direct Cost: ¥1,300,000、Indirect Cost: ¥390,000)
|
Keywords | コミュニケーション / シグナル / 騙し / ヤドカリ / 殻を巡る闘争行動 / 殻を巡る闘争 / 感覚便乗 / 捕食リスク / 殻交換 / 闘争行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヤドカリは脱皮成長に伴い新しい殻が必要となり、多くの場合ヤドカリ同士で交換する。殻交換は仕掛ける側が利益を得るための闘争行動である。仕掛ける個体が鉗脚や歩脚で相手の殻を掴み、自分の殻を相手の殻に打ち付ける打突行動が繰り返され、相手は耐えきれなくなると出てくる。仕掛ける側は相手の殻が気に入れば移動するが、気に入らなければ元の殻に戻るため、追い出された相手は殻に入れず、柔らかく無防備な腹部を曝すことになる。殻の打突は身体に直接ダメージを与える攻撃ではないのに、攻撃された個体はなぜ自分から出てきてしまうのか? 打突により殻に与えられる衝撃が捕食者の貝殻破砕の際の衝撃と類似しており、防御個体が捕食リスクと誤認して殻から出てくる、という捕食リスクへの応答に便乗した、攻撃する側による感覚トラップであるという仮説を私は考えた。そこで、実験的に捕食リスクを認知させたヤドカリ個体が、打突により早く降参するかどうかを調べることにより、この仮説の検証を試みている。 2018年度の実験により、同種のヤドカリを捕食したイシガニと仕切り越しに同じ水槽に入れられたテナガツノヤドカリ(以下、テナガ)とユビナガホンヤドカリ(以下、ユビナガ)は、どちらも捕食リスクを認識していると考えられた。 殻を巡る闘争について日本では、近縁種ホンヤドカリでは記載があるものの、ユビナガやテナガでは研究例がないので、試行錯誤しつつ2018年度より実験を行っている。しかし、テナガでは実験観察下で殻を巡る闘争が起こりにくく、現在に至るまで殆どデータは得られていない。ユビナガでは2019年度から少しずつデータが得られつつある。データの蓄積が容易でないため、2020年度からホンヤドカリでも実験を開始し、仮説検証に必要なデータが得られつつある。現在、ユビナガとホンヤドカリについて、録画データの数値化と解析を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験下で殻交換の観察例数を増やすためには、殻交換を仕掛ける側の個体に動機付けを行い、殻を巡る闘争を誘発させる必要がある。海外で盛んに研究されているPagurus bernhardusおよび日本で殻交換の研究報告のあるホンヤドカリP. filholiでも、人為的に窮屈なサイズの殻に強制的に移動させたり、現在使用している殻を一部破損したりする等して、攻撃の動機付けを行っている。これら2種はユビナガとは同属の近縁種であり、テナガとは科が異なる。今回それら先行研究を模倣し実験を行なっているものの、動機付けした個体がホンヤドカリのように高頻度では攻撃を仕掛けず、また、攻撃して闘争がエスカレートしても殻交換には至りにくい等して、データを得るのに時間を要している。動機付けのために殻を割る程度や割る場所を変えるなどして、試行錯誤を繰り返している。2020年度には新型コロナウィルス感染症のため、実験を担う学生が登学できない期間が発生し、申請者自身もオンライン授業の準備に追われるなどして、研究にかける時間が大きく減少した。そこで今回、補助事業期間延長の承認申請を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
海外のある種のヤドカリでは、闘争に負けた相手を4日間記憶し、認識しているという研究がある。それに基づき、2020年度には殻を割る動機付けを加えたユビナガ個体を5日間馴致させた後に、殻闘争実験を行ったところ、2019年度よりも効率的にデータを得ることができた。今後、ユビナガで引き続き実験を行うと共に、テナガでもこの手法を用い改めて実験を試みる。 国内生息種では貝殻闘争について研究報告のある唯一の種、ホンヤドカリでの実験も継続する。ホンヤドカリでは殻を割る動機付けを加えた翌日の実験実施でデータは得られている。録画データの数値化と解析を進めつつ、実験も行っていく。
|
Report
(3 results)
Research Products
(4 results)