照射ウランを用いた原子炉事故で生成する放射性エアロゾルの生成過程の解明
Project/Area Number |
18K11643
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 63020:Radiation influence-related
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高宮 幸一 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (70324712)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2020: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2018: ¥2,730,000 (Direct Cost: ¥2,100,000、Indirect Cost: ¥630,000)
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Keywords | 放射性エアロゾル / 核分裂生成物 / ウラン / 溶液エアロゾル粒子 / フィッショントラック / 溶液状エアロゾル |
Outline of Annual Research Achievements |
福島原発事故などのシビアアクシデントにおいて放出される放射性エアロゾルの一部には、核燃料物質であるウランが含まれていたことが報告されている。2021年度までの研究によって、溶液エアロゾル粒子の生成過程においてはエアロゾル粒子に付着する元素の化学的性状が大きく影響を与えることが明らかとなったため、2022年度よりウランが付着する生成過程について調査を行っている。エアロゾル粒子に付着するなどして含有されるウランの量は極少量であるため、フィッショントラック法を用いた極微量のウランの定量分析法を適用することを試みた。その結果、日本の土壌粒子に含まれる程度のウラン濃度であれば、ウランを含んだエアロゾル粒子の識別が可能であることがわかった。また、環境中には1950年代以降の核実験フォールアウトが残存しており、その中にウランを含んだ降下物粒子が混在していると、事故で生成したエアロゾル粒子との識別が困難となる。そのため、1960年以降に気象研究所が捕集した大気降下物試料に対してフィッショントラック法によるウランの分析を行ったところ、最も核実験が頻繁に行われた1960年代の降下物においてもウランが検出されることはなかった。したがって、福島第一原子力発電所の事故によって生成し環境中に放出されたウランを含んだエアロゾル粒子の性状調査において、フィッショントラック法が適用可能であると判断した。環境中に放出されたウランを含有するエアロゾル粒子の性状を調査することで、その生成過程についての知見を得ることができると考えられ、事故時の放射性物質による汚染状況の予測や汚染後の拡散予測などにおいて重要性が高いと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、研究用原子炉(KUR)で中性子照射を行った二酸化ウラン試料をFPの供給源として用い、アトマイザーを用いて発生させた溶液エアロゾルとチェンバー内で混合させ、放射性エアロゾルを生成する装置を開発した。2年目は、FPとエアロゾルを混合させるチェンバー内の容積が可変となるよう改良し、チェンバー 内容積を変化させることにより、結果的にFPがエアロゾル粒子の表面と相互作用する頻度を変化させることによって、FPとエアロゾル粒子との相互作用について定量的な考察を行うことを可能にした。3年目はウラン試料の照射条件を再検討し、分析可能な対象FPを短寿命のFPに拡張した実験を試み、福島第一原子力発電所事故における環境への影響が大きな放射性セシウム、放射性ストロンチウムについても分析を行った。生成過程の分析においては、FPがエアロゾル粒子へ付着して放射性エアロゾルを生成する確率である「付着率」を付着過程における静電相互作用の指標として定量的な分析を試みた。その結果、FPの付着率は、溶液エアロゾル粒子中の成分よりもFPの種類(元素)の違いの方に大きく依存することが分かった。 そこで、4年目においてはエアロゾル粒子に付着する元素のひとつとしてウランに着目した。上記と同等の検証を行うため、低濃度のウランを含んだエアロゾル 粒子の定量方法としてフィッショントラック法の適用を試みた結果、ガンマ線スペクトロメトリと比較すると精度は低いが、ウランを含むエアロゾル粒子の識別が可能であることがわかった。5年目においては環境中に存在すると考えられる核実験フォールアウトに起因するウランによる分析の妨害を検証した結果、最も核実験の頻度が高かった1960年代の大気降下物においてもウランが検出されることはなく、福島第一原子力発電所事故由来のウランを含んだエアロゾル粒子の識別が可能であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
フィッショントラック法による環境中に存在するウランを含んだエアロゾル粒子の識別が可能であることが示されたので、環境中(主に土壌試料)に存在するウラン粒子の探索を行う。ウランを含んだ粒子の識別にはフィッショントラック法を適用し、SEM/EDXによる外観観察、および元素分析による性状分析を行い、ウランを含んだエアロゾル粒子の生成過程についての考察を行う。また、溶液エアロゾルへの核分裂生成物元素の付着過程との比較を行う。
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Report
(5 results)
Research Products
(9 results)