Project/Area Number |
18K12308
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02020:Chinese literature-related
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare (2019) Ochanomizu University (2018) |
Principal Investigator |
小島 明子 東京福祉大学, 留学生教育センター, 特任講師 (20793847)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2019)
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Budget Amount *help |
¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2021: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2020: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
Fiscal Year 2019: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2018: ¥130,000 (Direct Cost: ¥100,000、Indirect Cost: ¥30,000)
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Keywords | 王国維 / 清末 / 『教育世界』 / 文学 / ゲーテ / 『教育叢書』 / 中国清末 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、王国維の青年期の経歴については従来不明な部分が多かったため、『教育世界』に関与した前後を中心とした時期に絞り、調査した。特に後世に最も影響を与えた『清史稿』での記述やこれが依拠した羅振玉による王国維伝を批判的に検証し、これまでの先行研究の諸説における問題点を整理し、再検討を加えた。これらの結果は中国文化学会会誌に査読つき研究ノートとして公表した。 また、『教育世界』の未詳記事からは、清末中国における日本を経由した異文化摂取の状況が窺える。それらのもつ情報量はどの程度で、当時における価値はいかほどであったかなどを明確にする必要があった。そこで、ゲーテ関連の記事を例に分析した結果、内容は洋書などにも依拠しており、当時すでに中国語で紹介されていたものをはるかに上回る情報が含まれていたが、現代におけるゲーテのイメージとはかけ離れ、観点に特徴や偏りが発見された。これらの記事は一時は王国維の著ともされながら、関係が不明であったが、日本資料の翻訳であるものの王が翻訳を行っていた可能性も高く、外国文化受容の媒介として『教育世界』の存在は看過できないと考えられる。当該研究成果は日本比較文化学会全国大会・国際学術会議において審査つき口頭発表を経、同機関誌に査読つき論文として掲載した。 また、文学方面に関しては、王国維の『教育世界』での詩・詞・文学論の業績を一貫した文学営為と見なし、時系列に沿いながら比較し複合的に分析することで、作者の文学観の形成状況や填詞の意義を明らかにした。この成果は日本詞曲学会会誌に査読付き論文として掲載した。 なお、科研費受給中の課題からは外れるが、萩原正樹・松尾肇子・池田智幸監訳『宋代文学伝播原論―宋代の文学はいかに伝わったか―』(王兆鵬『宋代文学伝播探原』武漢大学出版社、2013年)の「緒論」部分も担当した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の内容は主に二つに分けられる。①雑誌『教育世界』とその周辺について、と②王国維と主に文学・文学論を中心とした業績について、である。 当初は、前半は①、後半は②に重点を置くものとし、1~2年度目に入手した『教育世界』のデータを元に当雑誌の目録を作成するべく見積もりを提出していたが、この資料は中国各地に点在しており、中国国家図書館からの取り寄せに時間を要する等の諸事情から、『教育世界』資料の入手とこれに基づく目録の作成については延期し、それ以外の研究を前倒しして行っている。 ただし、進捗状況におけるマイナス要因は、必ずしも上記の事情や申請者側のみにあるわけではない。当該分野で特に重視されている一部の学外学会では、査読体制が公正ではなく、主に学内で指導関係にある編集委員の推薦によっており、査読者への依頼にあたっては利害関係の有無が考慮されず、不都合な論文は不当に却下されてしまう。そして採択しない方針があらかじめ決まっているものに関しても、あえて査読者が割り当てられ、情報や仕事が自動的に提供されてしまう仕組みがあるため、学会の審査を経ての公表には障害やリスクが多い。 上記の学会ではそれまでの経緯から、e-learningで受講したピア・レビューなどの研究倫理に明らかに反していたため、2018年投稿にあたり公正な査読を求めたところ、公正にはできないとして査読にかけられず、公表できなかった。そして、類似の学会においても評価が可能な立場にある研究者からの査読や適切なコメントを受けられず、口頭発表すら許可されなかった拙稿は、その後、他分野研究者を含む日本比較文化学会国際会議において2019年に口頭発表の機会を得、同学会誌でダブルブラインドの厳正な審査の下、利害関係のない査読者から有益な修正意見を具体的に頂戴した上で一度で採択された。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、『教育世界』のデータ資料を入手の上、出典を調査の上で、目録を作成し、これと併せて当時の周辺環境に関する資料を収集し研究する。調査等にあたってはネット上では必要となる資料の入手や閲覧が困難なことから、都心の図書館での調査が不可欠である。当初は東京の機関に所属し遠方への移動も容易であったことから想定していなかったが、当面は新型コロナウイルスの感染拡大による移動自粛による制限がかかる中、遠方で必要となる調査をいかに行うかが課題となる。口頭発表も延期せざるをえない。今後の状況によっては小課題を適宜変更し、時代に柔軟に対応した研究を行っていく必要もあるだろう。また、王国維の文学作品を精読の上、博士論文を土台に近い将来書籍として刊行することを目標とする。 なお、研究の計画的な実施と公表、学説の普及は学会からの評価の如何にかかっている部分が大きいが、それゆえの問題も存在する。申請者個人が今後研究計画を順調に実施するのみならず、研究者全体が公正な研究活動を行い、国際水準で学問を進展させるためには、学問上の価値を基準とした透明な審査体制に対する理解を広めることが重要である。
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