時間軸に対応した行政手続・行政訴訟――市民・司法府・行政府の「対話」理論の構築
Project/Area Number |
18K12631
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 05020:Public law-related
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
児玉 弘 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (30758058)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,160,000 (Direct Cost: ¥3,200,000、Indirect Cost: ¥960,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
Fiscal Year 2018: ¥1,560,000 (Direct Cost: ¥1,200,000、Indirect Cost: ¥360,000)
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Keywords | 行政法学 / ドイツ行政法学 / 行政行為論 / 行政手続論 / 行政訴訟論 / 行政手続の再開 / 義務付け訴訟 / 法と時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、いったん行政活動がなされた以後に、法・事実状態の変化があった場合における当該行政活動のあり方について、《行政の安定性・継続性》を担保しつつ、市民の権利を実効的に保障する行政法解釈の指針を提供する理論構築を目指す試みである。とくに、個別法に散見される時間の経過にともなう諸状態の変化に対応する法規定を《行政活動の適時性》を実現する一般的な法制度として設計するための理論的見通しを示すことを目標としている。 令和4年度においても、前年度に引き続き、個別法ないし個別事案について、法・事実状態の変化があった場合における当該行政活動のあり方について検討を行った。具体的には、以下のとおりである。(1)とりわけ大規模公共事業についは、諫早湾干拓事業を素材にして研究を進めている。当該事業をめぐっては、近時、開門確定判決(福岡高判平成22年12月6日判時2102号55頁)の強制執行の不許を求めて国が提起した請求異議を認めた福岡高裁判決(福岡高判令和4年3月25日訟月68巻5号377頁)に対する上告を棄却しまた上告申立を不受理とした最高裁決定(最決令和5年3月2日判例集未搭載)が出された。一般的には、この最高裁決定をもって司法の「ねじれ」が解消したとか、司法判断が統一されたとかといわれている。しかしながら、国が確定判決により自らに課された義務を履行しないという事態を行政法学ないし行政法理論が従前想定していたとは考えられないように思われることから、これらの裁判が行政法学ないし行政法理論に対して与える理論的影響を検討している。(2)令和5年度のはじめに、日本法社会学会および環境法政策学会における発表を予定していることから、その準備作業を行った。(3)行政法学に関する論文・裁判例を網羅的に回顧し、展望を示す論文の執筆に関与し、個別法の観点から行政法学を再構成する視座を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和4年度においては、当初計画していた、個別法ないし個別事案において、時間の経過にともなう法・事実状態の変化があった場合における当該行政活動のあり方について、大規模公共事業といった局面を素材にして、理論的・制度的な検討を行いつつ、それらを総括する論文としてまとめ、学会発表・公表への道筋をつけるなど、一定の成果をあげることができた。また、行政法学に関する論文・裁判例を網羅的に回顧し、展望を示す論文の執筆に関与し、個別法の観点から行政法学を再構成する視座を得たことも重要な研究上の進展である。 しかしながら、令和4年度内に計画していたドイツ法に関する検討(訪独しての現地調査)は、新型コロナウイルス感染症の国際的な感染拡大を受けて延期せざるをえなかった。また、個別法ないし個別事案の検討に重点を置いた結果、行政訴訟(義務付け訴訟)による継続的な権利救済のありようについての検討を十分に進めることができなかった。 このように、個別法ないし個別事案の検討については、当初の計画どおり順調に進展しているものの、ドイツ法および訴訟論の検討については、当初の計画からやや遅れ気味であることを総合的に考慮して、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度(=研究最終年度)においては、新型コロナウイルスの感染拡大等を受けて研究期間をさらに1年間延長したため、令和4年度と同様に、以下の3点が重点的な課題となる。 第1に、新型コロナウイルス感染症の国際的な感染拡大のために、積み残しとなったままになっている、これまでの文献調査による考察・検討によって生じた問題点についてのインタビュー調査を行う。とくにドイツ法に関する議論については、現地調査をにらみつつも、オンライン形式を積極的に利用することとする。 第2に、時間の経過にともなう法・事実状態の変化があった場合における当該行政活動のあり方について、とりわけ行政訴訟の局面において、どのような理論的な影響がありうるのかを個別法ないし個別事案をもとにして検討を行う(念頭に置いているのは、これまでの検討の積み重ねがある、大規模公共事業および原子力発電所の許認可・操業である)。なお、その際には、日本法およびドイツ法を相互に比較対照させつつ、個別法ないし個別事案の特質をも勘案する。また、すでに検討を行っている行政手続の局面における議論およびドイツ法を母法とする点で日本法と共通する台湾法における議論も適切にフォローする。 第3に、これまでの研究成果のとりまとめを行い、いったん行政活動がなされた以後に、法・事実状態の変化があった場合における当該行政活動のあり方について、《行政の安定性・継続性》を担保しつつ、市民の権利を実効的に保障する行政法解釈の指針を提供する理論構築を目指す。その際、「行政手続の再開」が市民、行政府の二者、「義務付け訴訟」が、市民、司法府、行政府の三者が「対話」をするのに適切なアリーナであることを明らかにしたい。
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Report
(5 results)
Research Products
(57 results)