多文化共生社会日本の医療を考える:中国帰国者の医療受診に関する実証的研究
Project/Area Number |
18K12929
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08010:Sociology-related
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小笠原 理恵 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任講師(常勤) (70814375)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2018: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | マイノリティ・ヘルス / 中国帰国者 / 医療社会学 / 多文化共生 / マイノリティヘルス / 語り |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウィルス感染症の制限が緩和されたことで、フィールド調査を再開することができた。9月には東京在住の中国帰国者家族にインタビューを実施した。またスノーボールサンプリングで北海道中国帰国者支援・交流センターの担当者に繋がることができ、10月には札幌でのフィールド調査を行った。札幌でのフィールド調査では、自身も帰国者3世である担当者にインタビューを実施するとともに、中国帰国者支援・交流センターにおける支援現場を視察した(日本語教室、パソコン教室、太極拳(健康)教室)。また5名の中国帰国者2世に個別インタビューを行った。加えて神戸帰国者日本語教室に定期的に訪問し視察を行った。 11月には、マイノリティ・ヘルスの本場である米国ボストンに赴いてフィールド調査を行った。マイノリティ・ヘルスを主要テーマとするアメリカ公衆衛生学会に参加し、アメリカ国内におけるマイノリティ・ヘルスの現状、とりわけCOVID-19が言語的・人種的マイノリティ住民に与えた影響や、それに対する行政・学術・市民各レベルにおける取り組みについて情報収集を行った。続いて、Tufts Medical Centerの医療通訳業務一切を取り仕切っているInterpreter Services Departmentを訪問し、遠隔医療通訳による診療現場に立ち会うとともに、医療通訳士4名のインタビューを行った。 研究のアウトプットの一つとして、本研究の主要テーマである「中国帰国者の受療の語り」を、看護学生および医学生を対象とした複数の授業の中で取り上げた。中国帰国者はもとより中国残留孤児・婦人という存在自体を知らない大学生も多く、これまで以上に、歴史を通してより良い医療のあり方を学ぶことの重要性を、未来の医療従事者たちに向けて示すことができた。 マイノリティ住民に対する日本の医療政策に関する文献調査も順調に進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は新型コロナウィルス感染症の制限が緩和されたことで、国内では東京、北海道、神戸において、海外では米国ボストンにおいて、フィールド調査を再開することができた。ただCOVID-19前に比べて、特に高齢の中国帰国者および家族から医療受診に関する深い語りを収集するのに困難が生じた。COVID-19を経たことが大きな一因だと推察されるが、それに関しては別途調査および検証が必要である。 アメリカのマイノリティ・ヘルスの教訓に関しては、11月に渡米してのフィールド調査が実施できたことで、必要な情報はほぼ入手できたと考えている。 マイノリティ住民に対する日本の医療政策に関する文献調査は、おおむね順調に進展している。 2022年度は、ようやく再開できたフィールド調査の実施を最優先したため、論文投稿などのアウトプットが進まなかった。そのため、改めて1年間の補助事業期間の再延長を申請し承認された。
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Strategy for Future Research Activity |
補助事業期間の再延長が承認されたのを受け、今年度は、2022年度のフィールド調査で足りなかった部分に関しては補足的な調査を実施しつつ、論文投稿および最終報告書の作成に取り掛かる。 【マイノリティ住民に対する日本の医療政策に関する文献調査】これまでの文献調査をもとに最終報告書を仕上げる。 【中国帰国者への聞き取り調査による実証的研究】2022年度のフィールド調査では、COVID-19前とは違って、後期高齢者である帰国者1世およびその家族から医療受診の深い語りを引き出すことが困難な状況が続いていることが察知された。本研究としても、当初計画していたように語りの収集で1冊の報告書を作り上げることは困難な状況になっている。引き続き、帰国者1世を対象にした医療受診の語りの聞き取り調査は可能な範囲で挑戦し続けるが、最終報告書には、帰国者の支援者や帰国者2世、3世への聞き取り調査から得たデータが中心にならざるを得ない。帰国者1世を対象とした語りの収集は、本事業の助成期間が終了した後も、自身の重要な研究テーマとして末永く取り組むつもりである。COVID-19によって疎遠になってしまった関係性の再構築からはじめたい。 【現地調査による米国式マイノリティ・ヘルスの日本への応用可能性の検討】米国ボストンでのフィールド調査で得た情報とインタビューデータをもとに、最終報告書を仕上げる。また、2023年のアメリカ公衆衛生学会(11月、アトランタ)の一般公募に本研究の演題を出しており、もし採択された場合にはアトランタでも補足的な現地調査を実施して、最終報告書に反映する予定である。
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Report
(5 results)
Research Products
(9 results)