触法女性障害者の支援において連携する社会福祉士と弁護士のジェンダー観に関する研究
Project/Area Number |
18K13001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 08020:Social welfare-related
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
松原 弘子 宮城学院女子大学, 人文社会科学研究所, 研究所員 (40465654)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2020: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
Fiscal Year 2018: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
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Keywords | ジェンダー視点を踏まえた支援 / 司法と福祉の連携 / ジェンダー・ステレオタイプ / フェミニスト・アプローチ / ジェンダー視点に基づく協働 / ジェンダー・インフォームド・ソーシャルワーク / ジェンダー・インフォームド・スーパービジョン / 社会福祉士と弁護士の連携 / 支援者の支援観 / 専門職の倫理 / ジェンダー視点 / ジェンダー理解 / 再犯防止 / 触法高齢・障害女性の支援 / ジェンダー / ソーシャルワーク / 触法障がい者 / 社会福祉士 / 弁護士 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究は、高齢や障害などに対する福祉的支援を必要としながらも何らかの触法行為によって司法的処分を受けた女性(以下、触法女性)を支援する弁護士と社会福祉士のジェンダー観が支援内容に与える影響を探る目的で計画された。当初は弁護士と社会福祉士の触法女性に対する支援観に含まれるジェンダーバイアスを明らかにしようと計画したが、2019年度までに実施した調査の結果、少なくとも社会福祉士に対しては、ジェンダー観を直接尋ねるより、支援計画立案で検討した家族へのアプローチを聴く方が支援者のジェンダー観を適切に聴取できる可能性が高いことがわかった。しかしCOVID19感染症の影響で2020年度からほぼ2年間研究を進めることができず、状況が改善した2022年度にはグループインタビューや研究会を再開したものの、予定していた海外渡航は2022年度も制限を受け、実施できなかった。この間世界ではジェンダー不平等の解消や女性への暴力を告発する社会運動が広がり、日本でも「ジェンダー平等」がポジティブな文脈の中で語られるようになってきた。コロナ禍が女性の貧困やDVに光を当て、ジェンダーを巡る議論が進展し、LGBTQ/SOGIのようなジェンダー問題に関する概念が一般にも知られ始めている。研究が停滞していた3年間の社会の変化を踏まえ、当初の研究計画を見直して、1)米国ジェンダー・センシティブネス先進地域におけるジェンダー問題の議論の進展を探る海外調査、2)触法女性の支援を行う弁護士・社会福祉士に対するジェンダー視点・認識に関するアンケート調査、3)ジェンダー視点が特に求められる触法女性支援に取り組んでいる弁護士・社会福祉士に対するインタビュー調査の3種類に整理し、支援者のジェンダー観が支援に与える影響を分析し、ジェンダー・センシティブな支援に必要な支援の見取り図を作成するゴールに向けて研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
この研究は2018年度から2020年度までの3年間の執行を予定して計画した。触法女性の支援という新しいソーシャルワーク領域を対象としたため、2018年度、19年度は、明らかにしたい事象を言語化する作業に取り組んだ。2019年度後半からインタビュー調査に着手したが、2020年からのCOVID19の感染拡大の影響で研究を進めることが困難になった。2020年から21年にかけて研究が進まなかったのは感染症の影響とその結果としての教育業務の多忙だったが、2022年度に予定していた研究が遅れた理由は数年間にわたる教育業務の多忙による研究者の体調不良であった。昨年度の実績状況報告書でも述べたが、研究者は大学では社会福祉士養成課程を運営する主たる実習演習担当教員で、さらに2021年度は学内事情から専任教員が1名という状況でCOVID19蔓延下の安全な授業と実習運営を進める必要があり、業務の中では教務を最優先にせざるを得なかった。2022年度は2021年度に比べれば制限は少なかったが、感染者が増えたことによる実習期間や実習先の変更は2021年度より多く、また2022年度は学科の教務担当者という任務を命ぜられたため、初めての経験で困惑することが多かった。2022年度は教員の欠員もあり、研究を具体的に進める時間が全く取れないほど業務が多忙であり、秋以降には心身の不調を感じるまでに追い込まれた。これ以上教育活動を続けながら体調の回復に努めることは困難であると判断し、10月には年度内の退職を決意するに至った。2023年3月末をもって専任教員を退任したため、2023年度は心身を休めるとともに、付属研究所員として研究を継続することで、本研究の結果をまとめる方向で研究計画を変更した。2023年度は研究に専念し、現在の社会ニーズに対応できる調査研究を年度末までにまとめ、発表したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要で述べた1)海外調査、2)国内調査、3)インタビュー調査(実施済み)の3つの結果を整理し、ジェンダー・センシティブな支援に必要な支援の見取り図を作成することを当面の目標とする。支援におけるジェンダー・ステレオタイプでは対象者を男女の特性から解釈するが、現在までの調査で、ジェンダー・ステレオタイプが見いだされやすいのは家族に対するアセスメントであるらしいと予測できた。支援者が、対象者の家族に何を期待しているかを知ることで、支援観に含まれる支援者のジェンダー・ステレオタイプを明らかに捉えられる可能性があることから、触法女性の支援にかかわる弁護士、社会福祉士に対する、支援対象者の家族に対する期待に焦点化したアンケート調査を実施する計画である。海外調査は当初の計画通り、ジェンダー平等の社会的理解が進んでいる北米マサチューセッツ州で、2017年以降のジェンダー問題の変化も含めた情報収集を行い、併せて、ジェンダーの多様性を含む家族の多様性の支援に関する実践についても情報収集することを予定した。さらに、すでに実施した社会福祉士、弁護士へのインタビューテキストを、家族構造や家族関係を解釈する際に浮き上がってくるジェンダー・ステレオタイプに着目して分析し、支援者に内在化しているジェンダー・ステレオタイプを言葉として捉え直す作業を進める。この作業を通じて、支援者の中のステレオタイプに依存した価値判断が自覚できるような「ジェンダー視点を持った支援観の見取り図=自己覚知マップ(筆者造語)」作成に研究協力者とともに取り組み、その結果を公表することを2023年度末までの目標とする。「自己覚知マップ」の完成に至らなかったとしても、自己のステレオタイプを相対化し、ジェンダー・センシティブネスが獲得できるような何らかの成果を得て、ジェンダー視点に基づいた支援の在り方を検討する試料を得たい。
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Report
(5 results)
Research Products
(1 results)