バラ科果樹にとってハルシメジ類は“寄生者”か?それとも“共生者”か?
Project/Area Number |
18K14458
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 39030:Horticultural science-related
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
遠藤 直樹 鳥取大学, 農学部, 助教 (20776439)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2021: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2018: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,000,000、Indirect Cost: ¥300,000)
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Keywords | ハルシメジ / 安定同位体 / 転流 / 植物体成長 / 菌根合成 / 菌根 / 共生 / 窒素吸収 / ニホンナシ / S/R比 / 比較解析 / 接種区・非接種区 / 葉面積 / 分子系統解析 / 宿主特異性 / 順化 / ハルシメジ型菌根 / ホクシマメナシ / 菌根苗 / 接種試験 / 土壌条件 / イッポンシメジ属 / 植物体生長 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,安定同位体標識した窒素化合物のハルシメジ菌糸体から宿主植物体への転流について調査した.Shishikura et al. (2019)にて確立したTUFC 101363株と同一地点で採取した菌株(MS20170421-05)とホクシマメナシの無菌実生を用いて,Shishikura et al. (2021)で確立した手法(斜面培地接種法)により,菌根合成を行なった.菌根合成における斜面培地には,酒石酸アンモニウムを15Nで標識した硝酸アンモニウムを,寒天をゲランガムにそれぞれ置き換えたMNC培地を用いた.対象区として,ハルシメジ菌糸体を接種しない区を設けた.菌根合成はグロースチャンバーにて5ヶ月間行い,菌株接種区と対象区で菌根形成の有無と植物体の成長量を比較し,IR-MSに供試した.その結果,接種区ではハルシメジによるホクシマメナシ実生への菌根形成が確認できた.実生の成長量を比較した結果,ハルシメジの菌根形成が見られた苗木と,対象区の苗木の間に地上部の成長量の肉眼的な違いは認められなかった.しかし,ハルシメジの菌根形成が見られた苗木は,対象区の苗木と比較して,有意ではないものの,地下部の乾燥重量が大きく,S/R比は低い傾向にあった.この結果は,昨年度,TUFC 101647株を用いて菌根合成試験を行なった結果と矛盾する.IR-MSの結果,ハルシメジの菌根形成が見られた苗木は,対象区の苗木と比較してδ15Nの値が低く,葉,茎,細根,主根のいずれにおいても差は有意であった.以上の結果から,ハルシメジのMS20170421-05株には15Nの植物体への転流を阻害する働きがあると考えられた.一方,101647株は生育不良のため今回の試験に供試できなかったため,今後本株の生育を改善した上で,再試験を行う必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は,本研究の目玉でもあった,安定同位体標識した窒素化合物のハルシメジ菌糸体から宿主植物体への転流について実施できた.この実験を実施するまで,文献調査などを行い,結果的に4年の歳月を経過してしまったため,「やや遅れている」の評価とした.研究全体の進捗状況としては,ハルシメジ類の胞子分離法を確立できたこと(論文公表済み),ホクシマメナシを宿主として用いたハルシメジの菌根合成に世界で初めて成功したこと(論文公表済み),ハルシメジ類は菌株によってはホクシマメナシ実生の成長を促進すること(今後,論文化の予定),ハルシメジによる15Nの植物体への転流については,阻害的に働くが,ハルシメジが14Nと15Nを識別して取り込みを制御する可能性について,検討する必要性が浮上したこと,を明らかにできた.本研究の命題である「バラ科果樹にとってハルシメジ類は”寄生者”か?それとも”共生者”か?」の問いに明確な答えを提示するためには,未だ課題の多い状況ではあるが,ハルシメジ類は少なくともバラ科果樹を衰弱や枯死に至らせる影響力は持たないことは明確にできたと考えられ,本研究における最低限の責任は果たせていると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,ハルシメジ類は菌株によってはホクシマメナシ実生の成長を促進する場合があるというデータについて,論文公表を目指す予定である.また,ハルシメジ類の系統解析に関するデータについても,投稿論文化を目指す予定である.今回,ハルシメジによる15Nの植物体への転流については,阻害的に働いたが,ハルシメジが14Nと15Nを識別して取り込みを制御する可能性があるのか否かについて,過去の外生菌根菌の研究事例を基に検討する.現在,101647株の生育を改善した上で,安定同位体標識した窒素化合物のハルシメジ菌糸体から宿主植物体への転流に関する再実験や,今年度実施に至らなかった白モンパ病菌に関する実験を計画している.
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Report
(5 results)
Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Four mycelial strains of Entoloma clypeatum species complex form ectomycorrhiza-like roots with Pyrus betulifolia seedlings in vitro, and one develops fruiting bodies 2 months after inoculation2020
Author(s)
Shishikura, M., Takemura, Y., Sotome, K., Maekawa, N., Nakagiri, A., Endo, N.
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Journal Title
Mycorrhiza
Volume: 31
Issue: 1
Pages: 31-42
DOI
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Peer Reviewed
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