Research Project
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
ヒトやマウスの腸上皮細胞は3~5日間の周期で恒常的に入れ替わり(ターンオーバー)が起きており、そのターンオーバーは腸上皮細胞の増殖、分化、移動、細胞死等により厳密に制御されることが知られている。しかしその一方で、生体内で腸上皮細胞のターンオーバーを制御する具体的な因子に関しては、未解明な点が多い。そこで本研究では腸上皮細胞のターンオーバーを制御する新規性の高い因子を探索するため、特に腸管内に存在する物質に着目した解析を行った。主な解析にはマウス小腸から単離した陰窩領域の初代培養で得られる腸オルガノイドを使用した。腸幹細胞を含む腸オルガノイドは腸上皮細胞の増殖や分化をex vivoで高度に再現しながら成長することが知られており、本研究では対象とする因子が腸オルガノイドの成長に与える影響について評価した。まず、本研究ではマウス盲腸より回収した盲腸内容物(腸管内の物質の凝集物として使用)中に腸オルガノイドの成長を著しく促進する物質が含まれることを明らかにした。また盲腸内容物の作用は、腸上皮細胞の増殖や分化を強く刺激する因子として知られる上皮成長因子(epidermal growth factor; EGF)とは異なる物質によるものであることも確認した。さらに盲腸内容物に含まれる物質中より、腸オルガノイドの成長促進に働く具体的な因子を探索したところ、候補の一つとしてリゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid; LPA)の可能性を見出した。現在これらの研究成果の一部について、学術論文として報告するための準備を進めている。