Research Project
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
本研究では、心筋細胞より産生される心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の心不全病態における分子型の変化と生成機序、並びに病態生理学的意義の解明を目的とした。先ず所属グループで開発したANP3分子型の特異的測定系(総ANP=αANP+βANP+proANP、βANP、proANP)を改良した。総ANPとproANP測定系ではproANPを標準として用いるが、分子内ジスルフィド(SS)結合の有無により、各測定系の構成抗体の親和性が異なっていた。そこでSS結合を還元後、酸化してSS結合を再形成し、精製後に純度確認された画分を標準として使用し、その安定性などを確認した。本研究では、心房心筋細胞での実験が必須である。これまでラット新生仔の心室心筋細胞培養系は常用していたが、心房心筋細胞の調製法を京都大学 錦見先生よりご教示いただき、両細胞で小胞体ストレス負荷とβANP生成機序を研究できる実験系を構築した。ヒト心筋組織では、正常時には心房がANP産生の主体であるが、心不全時には心室での産生が亢進し、産生される分子型も心房と心室で異なる。この相違の解析は、ANP3分子型の生成機序を探る上で重要な情報源となるため、拡張型心筋症をはじめとする重症心不全患者の心臓移植症例、剖検症例の24例について左房、左室、右房、右室の心筋組織を収集し、ANP生成系に関わる酵素群のRNA-seqを実施可能とした。研究の一環として、急性心不全における血中ANP3分子型の濃度測定を行い、3分子型の中でproANPが予後予測バイオマーカーとして優れ、BNPより有望である可能性を示す論文作成に貢献した(投稿中)。以上のように、βANPの生成機序やANPのプロセシング制御機構の研究基盤は確立できたが、任期終了に伴う退職により継続不能となった。しかし、次の研究者が成果を生み出せる研究基盤を構築できた。
All 2019
All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results)
Peptides
Volume: 111 Pages: 3-17
10.1016/j.peptides.2018.08.006