Research Project
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
ボルデテラ属に分類される代表的な病原因子である百日咳菌、パラ百日咳菌および気管支敗血症菌は、いずれも哺乳動物の呼吸器に感染して特徴的な咳嗽発作(咳発作)を引き起こすが、その発症機構は全く明らかになっていない。そこで本研究では、宿主特異性の広い気管支敗血症菌のラットへの感染系を用い、咳原因因子の同定および発症機構の解明を目指した。前年度までにラットを用いて咳発作を解析し、気管支敗血症菌の咳原因因子は抗シグマ因子をコードするbspRの下流で転写制御を受けて発現することを明らかにしている。また、気管支敗血症菌のBvg+相(病原性)の菌体破砕液をラットに投与すると咳発作が起こるのに対し、Bvg-相(非病原性)菌体破砕液投与では咳発作は起こらない。以上の知見から、Bvg+相で発現し、かつBvg-相でほとんど発現せず、またBspRによって発現レベルに影響を受ける因子を咳原因因子の候補として探索を試みた。BspR欠損株菌体破砕液の投与量を変更し咳発作を解析したところ、野生株と同様の咳発作の推移を示した。このことから咳因子は感染時のみBspRの制御を受けることが示唆された。そこで、野生株とbspR欠損株を比較したRNA-seqと、Bvg+相とBvg-相を比較したマイクロアレイを組み合わせて解析し、Bvg+相で発現し、かつBvg-相でほとんど発現せず、またBspRによって発現レベルに影響を受ける81の候補遺伝子を選出した。更に候補遺伝子を絞り込むため、ラット気管感染時における野生株およびbspR欠損株についてin vivo RNA-seqに供することを目指した。現在RNAサンプルの抽出方法について検討中である。今後は野生株およびbspR欠損株についてin vivo RNA-seqを行うこと、また分画した菌体破砕液を用いた咳原因因子の探索を行う予定である。