Research Project
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
がんの発症・進展には、がん細胞自体が持つ増殖能力に加えて、がん細胞を取り囲む環境も重要な役割を果たす。このようながん細胞と周囲の微小環境との相互作用は、近年多くの注目を集めている。先行研究において、申請者はEpstein-Barrウイルス(EBV)陽性悪性リンパ腫細胞が、エクソソームと呼ばれる細胞外小胞を介して、周辺のマクロファージにウイルス由来miRNAを輸送することにより、リンパ腫細胞の増殖に有利な微小環境形成を促すことを報告している。本研究課題では、マクロファージによる腫瘍由来エクソソームの取り込み機構を明らかにすることを目標とし、さらにその阻害により、腫瘍の増殖を抑制することが可能かについて検証する。先行研究の結果から、マクロファージはエクソソーム表面のリン脂質・ホスファチジルセリン(PS)を認識することにより、細胞内に取り込むことが認められていた。そこで、マクロファージに発現するPS認識分子の中で、その発現量とエクソソームの取り込み活性が相関するものを探索し、CD36、CD300a、MerTK、GAS6を候補分子として絞り込んだ。ヒト単球様細胞株THP-1において、siRNAによりこれらの分子を同時に発現抑制すると、エクソソームの取り込みが抑制される細胞群と、活性化される細胞群に分かれることが明らかになった。この現象をさらに詳細に解析するため、THP-1においてこれらの分子をノックアウトした細胞を作製した。今後はこの細胞を用いてエクソソーム取り込み活性を評価する。さらに、これらの分子が生体内での腫瘍増殖に影響するかを検証するために、先行研究でも利用したEBV感染マウスモデルに、阻害抗体を投与するなどの方法でエクソソーム認識分子の影響を評価する。