Research Project
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
我々はこれまでの研究で、野生型EGFRと変異型EGFRをもつ肺がん細胞において、肺サーファクタント蛋白質D(SP-D)が抗腫瘍活性を持つことをin vitroで明らかにし、EGFR遺伝子陽性非小細胞肺がん患者の血清SP-D値は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)の効果と予後と関連することを明らかにした。この結果から、SP-Dがもつ抗腫瘍活性をより明らかにすることで、肺がんの新たな抗腫瘍薬の開発につながる可能性、また、血清SP-D値とSP-D遺伝子多型は、EGFR遺伝子陽性肺がん患者の予後予測の新たなバイオマーカーとなる可能性を考えた。本研究の目的のひとつは、これまでin vitroで明らかにしたSP-Dの抗腫瘍活性について、in vivoでその効果を確認し、将来の抗腫瘍薬の開発の基礎的研究とすることである。ふたつめは、血清SP-D値とSP-D遺伝子多型が肺腺癌の予後予測のバイオマーカーとなるか明らかにすることである。札幌医科大学附属病院と研究協力病院に通院中のEGFR遺伝子変異を検索した非小細胞肺がん患者を対象に、初回治療前の血清SP-D値とSP-D遺伝子多型を測定し、変異型EGFRと野生型EGFRで初回治療前の血清SP-D値とSP-D遺伝子多型とで治療効果と予後に差がないか前向きに検討を開始した。目標症例数は100人であったが、開始時より目標症例数には達しなかった。現在EGFR-TKIによる治療を開始しており、今後予後について検討していく予定である。