Research Project
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
コレシストキニンは消化管ホルモンおよび神経ペプチドとして機能することが知られているが、近年、コレシストキニンの免疫系における役割が注目されている。本研究では、コレシストキニンの炎症性皮膚疾患における役割を明らかにするために、イミキモド誘導性マウス乾癬モデルを用いてコレシストキニンの効果をin vivoで評価した。C57BL/6マウスの耳介にイミキモドクリームを6日間連続塗布することにより乾癬様皮膚炎を誘導し、耳介の厚さを測定することにより炎症反応を評価した。イミキモドクリーム塗布開始前日から計4回、硫酸化型コレシストキニン8(CCK8S)を腹腔内投与すると、対照群と比較して耳介の腫脹が軽減した。耳介の組織学的変化を顕微鏡下で観察すると、対照群では顕著な表皮の肥厚、不全角化や炎症性細胞浸潤等、乾癬性皮膚炎に特徴的な変化が認められたが、CCK8S投与群ではこれらの組織学的変化が軽微であった。また、耳介からRNAを抽出し、real time PCR法によりサイトカインmRNA発現を定量化したところ、対照群ではイミキモドを塗布することによりIL-17、IL-22およびIL-6の発現が顕著に上昇したが、CCK8S投与群では対照群と比較してこれらのRNA発現が有意に低かった。一方IL-23の発現については、対照群とCCK8S投与群間に差は認められなかった。また免疫組織化学染色により、正常皮膚では表皮にCCK8の発現が確認されたが、乾癬患者の皮膚病変部ではCCK8発現が完全に消失していた。興味深いことに抗IL-17抗体投与により症状が改善した部位では、一部の患者でCCK8発現が回復していた。以上の結果から、コレシストキニンは局所のサイトカイン産生を制御することにより乾癬性皮膚炎の発現を抑制すること、また病変部におけるCCK発現の低下が症状の持続および増悪化に寄与する可能性が示唆された。