文字を書くときの座標系はどのように決定されるのか?
Project/Area Number |
18K19816
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 61:Human informatics and related fields
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
高橋 俊光 獨協医科大学, 医学部, 助教 (00250704)
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Project Period (FY) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2019: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2018: ¥3,120,000 (Direct Cost: ¥2,400,000、Indirect Cost: ¥720,000)
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Keywords | 身体表象 / 書字 / 自己身体表象 |
Outline of Annual Research Achievements |
書字の座標系決定機構の解明は、脳の運動制御研究の格好の題材である。通常、鏡文字の書字は難しいが、眼前の書字板の裏面に鏡文字をすらすらと書ける一群がある。このとき手関節の橈尺方向の運動は正字の場合と逆なため、「正字の」文字表象を、運動コマンドを反転させて出力する機構が存在するという説と、そもそも「鏡文字の」文字表象が存在しそれを出力するという説とがある。 当該年度は、これら2仮説の検討するために、まずペンタブレットを用いた定性的な探索的予備実験を行った。条件として、書字面の身体中心座標系での位置、書字結果を出力するPCモニタの位置、ペンの先で書くか尻で書くか、を設定した。主な結果として、モニタから離れた位置の書字板に正字で書けた条件下で、その書字板を裏返し書字すると鏡文字を書いた。また、書字板にペン先で正字で書けた条件下で、手の姿勢を変えずにペンの尻の当たる面に書字面を配置したところ鏡文字となった。これらは、運動出力のペン先(尻)の位置と、視覚イメージの投影される平面(モニタ)の位置の、主観的な認識が重要であることを示す。これにより、上述の2仮説を検証するアプローチではなく、そもそもヒトは、主観的に認識する書字の空間内で、脳内の文字表象をイメージ通りに出力できるという、主観的な身体位置感覚に基づく高次の運動制御機構の存在を想定するのが妥当と考えるに至った。 次に、このことを定量的に主張するために、ヘッドマウントディスプレイおよび3次元触覚/力覚デバイスを導入し、VR空間での書字実験環境の構築を進めた。これはVR空間で書字面やモニタの位置を系統的に設定し、またアバターを通しての身体感覚錯覚を利用して“視点”(身体中心座標系)を操作した上で、書字動作を計測するものである。しかし、新型コロナウイルス感染拡大防止のため被験者が募集できず実験データを収集するには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、被験者を公に募集ができなかったため、昨年度までに構築した、従来の仮説を検証するための実験系でのデータを収集することができなかった。しかし、研究者自身が被検者となり種々の予備実験を繰り返すことで、従来の仮説を修正する新たな仮説を導けた。具体的には、健常者が書字板の裏面にすらすらと鏡文字をかける機構を解明するためとして、(1) 手関節の橈尺方向の運動コマンドを逆転して出力する脳内機構が存在する説と、(2) そもそも「鏡文字の」文字表象が存在しそれを出力するという説を検証しようとしてきたが、当該年度に行った予備実験の結果から、運動出力のペン先の位置と、視覚イメージの投影される平面の位置の、主観的な認識が重要であることが示唆されたため、新たな仮説として、主観的な身体位置感覚に基づく高次の運動制御機構による説明を想定するに至った。このことは大きな進展であった。 次に、これを定量的に主張するために、視線計測機能付きのヘッドマウントディスプレイおよび3次元触覚/力覚デバイスを導入し、VR空間で書字面やモニタの位置などを自由に設定した上で、アバターを通しての身体感覚錯覚を利用した”視点”(身体中心座標系)を操作することにより、主観的な書字空間での書字出力を定量的に計測できる実験系の開発を進めたが、本番のデータ収集できるまでの完成には至っていない。 以上を総合して、進捗はやや遅れているものと自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に、新型コロナウイルス感染拡大防止のため一般被験者を対象とした実験を実施できない中で、研究者自らが被験者となり行った予備的実験により得られた新たな仮説に対し、次年度は、これを検証するための実験系を完成させデータの収集・解析を行う。具体的には、新たな仮説とは、鏡文字がすらすら書字できるような書字座標の決定および書字運動出力のメカニズムが、主観的な書字空間における身体位置感覚に基づく高次の運動制御機構によるとするものである。その検証のために、VR空間内で書字面やモニタの位置などを系統的に設定した上で、アバターを通しての身体感覚錯覚を利用した”視点”(身体中心座標系)を操作することにより、主観的な書字空間での書字出力を定量的に計測できる実験系を完成させ、一般被検者からデータを収集する。
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Report
(5 results)
Research Products
(5 results)