Project/Area Number |
18KK0270
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Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (B))
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 58:Society medicine, nursing, and related fields
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Research Institution | Osaka Institute of Public Health |
Principal Investigator |
左近 直美 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (50291216)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
余野木 伸哉 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主任研究員 (20553613)
北島 正章 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30777967)
駒野 淳 大阪医科薬科大学, 薬学部, 教授 (60356251)
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Project Period (FY) |
2018-10-09 – 2025-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,940,000 (Direct Cost: ¥13,800,000、Indirect Cost: ¥4,140,000)
Fiscal Year 2021: ¥2,470,000 (Direct Cost: ¥1,900,000、Indirect Cost: ¥570,000)
Fiscal Year 2020: ¥4,680,000 (Direct Cost: ¥3,600,000、Indirect Cost: ¥1,080,000)
Fiscal Year 2019: ¥6,240,000 (Direct Cost: ¥4,800,000、Indirect Cost: ¥1,440,000)
Fiscal Year 2018: ¥4,550,000 (Direct Cost: ¥3,500,000、Indirect Cost: ¥1,050,000)
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Keywords | 環境サーベイランス / 下水疫学 / ノロウイルス / ディフィシル菌 / 感染実態 / 下水サーベイランス / 腸管感染症 / サーベイランス / 下水 / 新型コロナウイルス / 環境循環 / 分子疫学 / 不顕性感染 / 伝搬様式 / 環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
感染症発生動向調査で報告される各感染症患者報告数はCOVID-19に対する社会的感染対策の実施により著しく減少したことを報告したが、その後、患者報告数は増加している。このように多くの疾患において流行期に患者がほとんど観察されない期間があったことは、これまでにない。そこで、流行のない期間におけるウイルスの循環・維持を下水から考察するため、各種ウイルスの検出系構築を試み、下水試料に展開している。また、ウイルス感染環の解明には発症者ベースの解析も必要であるため、患者から検出されたノロウイルスのゲノム解析を実施した。海外では流行の主要株でありながら国内では主要遺伝子型ではなかったGII.4[P16]が2023年以降拡大傾向にあることがわかった。また同時に、過去の流行株にクラスタリングされる株も検出されており、変異の方向性が多様である可能性を示唆した。ヒトと環境におけるノロウイルスの動態を明らかにするべく下水におけるバリエーション解析の結果との相関を解析予定である。ディフィシル菌(C. difficile)についてはこれまでに臨床分離株と下水や大気エアロゾルなどの環境由来株に対する分子疫学的解析によって、全国に普遍的に存在する株と地域に限局して存在する株の存在を示唆してきた。環境からは臨床分離株と同じ遺伝子型の菌を分離した一方で、環境にのみ存在する菌も存在している。菌株の系統に注目することで、下水を使用して地域の流行を探知できる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
下水検出株と患者検出株とのバリエーション解析のため、まずは胃腸炎発症者から検出されたノロウイルスの分子系統解析を実施した。2020年は感染性胃腸炎の報告数が認められなかったが、2021年3月から6月にGII.2[P16]が主要な遺伝子型として流行した。この遺伝子型は2016年以降小児の胃腸炎の主要な遺伝子型となっており、小児においては検出が続いた。ノロウイルス流行期は通常冬季であるが2022年6月に流行ピークが確認された。同一シーズン検出株は系統樹上、同一のクラスタを形成するが、2015年検出株のクラスタに属する株も存在した。ノロウイルスは変異速度も速く遺伝子型は多様性に富んでいるが、過去の流行株がどのように存在しているのか、変異の方向性が多様性であるのか下水におけるバリエーション解析の結果をふまえてノロウイルスの感染循環を考察していきたい。下水におけるバリエーション解析が遅れている。ディフィシル菌の地域流行を全国の14医療機関から院内サーベイランス情報情報を収集し、全国10の河川から分離した環境株の遺伝子型と合わせて評価したところ、全国共通株と地域独自株(土着株)が存在するという流行動態が示唆された。これまでに分離された菌株について、次世代シークエンサーを使用してゲノム配列データの取得を継続している。さらに、下水を使用した簡便なモニタリングのためにddPCR法を用いた定量的な系を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
多くの疾患において流行期に患者がほとんど観察されない期間があったことは、これまでになく、この期間におけるウイルスの感染環の維持を明らかにするには下水が適していると考えている。感染性胃腸炎報告数と患者から検出されるノロウイルスの変化に加え、下水におけるノロウイルスの動態ならびにゲノム解析を実施し、ノロウイルスの伝搬様式の解明につなげたい。さらに新たに構築したウイルスのマルチ検出系を活用し、インバウンドの増加による変動を観察するとともに、腸管感染症以外の疾患についても、感染との地理的、時間的な相関解析を行い、伝播様式や新規変異株、耐性の伝播様式の解明を進める。院内サーベイランスと環境分離株の解析を深めるとともに、解読したディフィシル菌の全ゲノムデータを利用して、菌株レベルで臨床由来株と環境由来株を比較する。また、世界各国で分離された株との異動を明確にする。ddPCR法を用いて下水中のディフィシル菌数と毒素遺伝子を保有するディフィシル菌数をモニタリングする系を構築して、分離法との相関を検証する。必要に応じて特定の流行株を検出する系を構築して、流行のモニタリングや予測への応用を試みる。
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