On the relationship between economic inequality and fiscal/monetary policy in DSGE models with heterogeneous agents and firms
Project/Area Number |
18KK0368
|
Research Category |
Fund for the Promotion of Joint International Research (Fostering Joint International Research (A))
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Field |
Economic theory
|
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
山田 知明 明治大学, 商学部, 専任教授 (00440206)
|
Project Period (FY) |
2019 – 2024
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
|
Budget Amount *help |
¥10,270,000 (Direct Cost: ¥7,900,000、Indirect Cost: ¥2,370,000)
|
Keywords | 動学的一般均衡理論 / 金融政策 / 経済格差 / 企業の異質性 / NTA / SNA / 国民移転勘定 / 国民経済計算 / 財政政策 / 所得格差 / 資産格差 / ニューケインジアン / 再分配政策 |
Outline of Research at the Start |
本研究の目的は、景気循環と経済政策、経済格差の間の関係を定量的に把握することにある。例えば、拡張的金融政策(利下げ)は景気改善効果を持つことから、一般的に低所得層の経済状態を改善する効果があると考えられている。しかし、株価上昇などを通じて富裕層により利する結果になっているという可能性も指摘されている。いわゆる景気対策は結果的に家計間で富の再分配をしているが、それがどのような影響を持つのかについては理解がすすんでいない。従来の財政・金融政策の分析ではGDPや総消費といった集計量にどのような影響を与えるかという側面のみが注目されてきたが、本研究では再分配側面も含めた形で政策評価を行う。
|
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、基課題において執筆途中である"The Effects of Monetary Policy Shocks on Inequality in Japan"で得られた研究成果を発展させる形で金融政策と経済格差の関係性について定量分析を行うというものである。1980年代から1990年代後半にかけて、金融政策は勤労世帯の給与所得格差に影響を与えていた一方、その影響力は時間とともに弱まっている事が明らかになった。
当該論文において使われたデータは総務省統計局が集めている家計調査の個票データであるが、論文執筆当時に利用可能であったデータ期間が1981年から2008年であることから、その期間のデータをプールした分析結果に限定されていた。しかし、2008年以降、世界的不況(the Great Recession)、東日本大震災、アベノミクスに伴う量的・質的金融緩和政策等、様々なマクロショックが経済格差に影響を与えた。そのため、2023年度はデータを更新したうえで、推計結果もアップデートすることを行った。2008年以降の日本の経済格差の推移の実証データに関しては、家計調査から推計を行った上で、ESRI Discussion Paperにて成果の一部を公開した。また、更新したデータに基づいた金融政策と格差の関係性に関しては、同じく推計をやり直したうえで、フィラデルフィア連銀でのコンファレンス及びSurrey大学、London大学Royal Holloway校で途中経過を報告し、様々なフィードバックを得た。結果を取りまとめた上で、別論文として公表予定である。また、同時並行で行っている日本の所得・消費・資産格差の実証分析についてはデータブックとして英文の書籍化作業を行っている途中であり、その途中経過はDiscussion Paperの形で公表済みである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、2020年4月に渡英をして2021年3月までの1年間で共同研究を行う予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響から2020年4月の渡英が困難になり、一時的にロックダウンが解除された8月末に渡英をした。その後もイギリス国内で第2波、第3波の感染症の波が襲ったことから度々ロックダウンを繰り返し、滞在期間の8ヶ月間のうち累計で5ヶ月以上がロックダウン期間となってしまった。帰国後も英国の研究者グループ達とコンタクトを取り続けたが、2021年-2022年期間は引き続き新型コロナウィルス感染症の影響を見ながらの作業となった上、ロシアのウクライナ侵攻に伴って空の便が一時的に混乱したこともあり、主にデータの面でスケジュールが当初の予定から大幅に遅れることになった(使用するデータは家計に関する個票データであり、プライバシーの問題から、使用が現地に限られるなど制限される)。
研究計画書を書いた時点から年月が経過してデータが古くなったことから、データの更新作業を行った。更新された日本の経済格差の推移に関しては、内閣府経済社会総合研究所のDiscussion Paperとして2024年4月に公開された。また、2023年8月に(部分的に)データを更新した結果に基づいた再推定結果をフィラデルフィア連銀にて共著者が報告を行った。昨年度の実施状況報告書に記載したNTA関連研究も8月に国際コンファレンスで経過報告を行った。2024年3月には約2週間渡英をして、研究報告を行うと同時に、共同研究作業に関する再確認を行った。その際、バブル研究の専門家からHeterogeneous Agentモデルに存在する複数均衡及びバブル均衡の存在の可能性を指摘された。この点は今後の本研究プロジェクトに深く関わることから、密に連絡を取りながら、新たな研究につながるかを慎重に検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
進捗状況で記載をしたように、本研究課題は新型コロナウィルスの蔓延に伴う国際的な人の移動の制限の影響を強く受けた。その後もロシアのウクライナ侵攻の影響を受けて、申請時に記載した渡航先であるイギリスとの通年での一年間の在外研究及び高頻度での行き来は非常に困難な状況が続いた。2022年前半までは共同研究の打ち合わせや学会報告もオンラインばかりで制限された状況が続いていたが、後半頃から脱コロナの兆しが見え始め、行き来も緩和された事から対人での研究活動が復活してきた。本研究課題は研究計画調書に記載したように英国(と日米)の個票データを用いた分析を行う予定であったが、プライバシーの問題から強い制限を受ける秘匿データは直接現地に行って取り使う必要があるため、当初の計画からデータ部分に関しては強い制限を受けている。この点を補うため、日本側のデータ(「家計調査」及び「全国消費実態調査」)をより拡張的に活用することでデータ不足を補完する計画である。
成果の一部は2024年4月にESRI Discussion Paper(東京大学の北尾早霧教授と共同研究)として公表した。また、英文での書籍化作業も進行している(すでに出版社と契約済み)。本年度は最終年度になることから、理論モデルの構築に注力するとともに、更新した論文を完成させて、英文査読誌に投稿予定である(2024年12月にロンドンにて学会報告予定)。また、2024年8月に明治大学にてHeterogeneity and Macroeconomics Conferenceというタイトルでの国際コンファレンスを開催する。すでに論文投稿を締め切り、近日中にプログラムが公開される予定である。
|
Report
(5 results)
Research Products
(11 results)