Budget Amount *help |
¥5,000,000 (Direct Cost: ¥5,000,000)
Fiscal Year 2008: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
Fiscal Year 2007: ¥2,400,000 (Direct Cost: ¥2,400,000)
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Research Abstract |
本研究では, 生命の最も基本的かつ重要な機能のひとつを担うRNAとタンパク質の複合体(すべての生体内タンパク質生合成に必須)における酵素触媒反応について, ハイブリッド分子動力学シミュレーションによる解析を推進した。ロイシルtRNA合成酵素と特異的なtRNAの複合体によるエディティング反応が解析の主たるターゲットである。昨年度までに, 溶媒等を含むリアルで精密な計算モデル(約170,000原子)を構築し, これを「まるごと」量子ハイブリッド計算の対象とし, 反応機構の高精度な解析を初めて実現した。以上の計算は, 本研究において開発したQM/MMハイブリッド・インターフェースシステム(本年度プレス・リリースを実施)を駆使して実現した, ハイブリッド分子動力学計算によるものである。これにより, 本年度は主として以下の成果を得た。1)昨年度明らかになった, 大まかな反応経路および反応機構をより広範かつ綿密に計算し, 最適経路を決定した。その結果, 活性化エネルギは昨年度の概算よりも大幅に下がり, 約20kcal/molと結論付けた。2)反応開始段階における, 求核剤となる水分子の活性化は, RNA(その03'原子)が水分子のH原子を吸引し共有することによって生じ, タンパク質因子(アミノ酸残基)によるものではないことを明らかにした。すなわちこの反応の実体は, 驚いたことにRNA酵素(リボザイム)であることを見出した。実際この系では, 従来より「タンパク質に対する」変異体実験が十分に成功していないが, この計算結果によりその理由が明らかとなった(タンパク質ではなくRNAが反応を駆動している)。4)同様な反応機構をもつと考えられる系を, 既知の結晶構造に対して組織的に探索した結果, これはリボザイムにおける主要なクラスのひとつとして追加すべき, 新規の重要な反応系であることがわかった。またこれは, 生命誕生におけるRNAワールド仮説を強く支持するものであり, 当該の系はさらに, RNPワールドへの生命進化における鍵を握るものであることが明らかになった。
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