Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas
π共役ポリマーは主鎖上のπ電子が長距離にわたり非局在化することで高い電気伝導性を有する物質であるが、外部刺激によりポリマー主鎖の電子状態を自在に制御することが可能になれば、さらに魅力的な物質となる。低分子化合物と決定的に異なるπ共役ポリマーの特徴としては、ポリマー主鎖の部分的な電子状態変化が比較的長距離に伝搬し、バルクとしての電気伝導性、磁性、色などの変化をもたらすことである。本研究では光照射により磁性や伝導性が制御可能なπ共役ポリマーの創製を目指して、ポリマー主鎖に不対電子を配したπ共役ラジカルポリマーと、主鎖の光誘起スピン分極を引き起こす光信号入力ユニットとしてラジカル解離型高速発消色フォトクロミック分子を合成開発した。ヘキサアリールビスイミダゾール(HABI)は純国産のラジカル解離型フォトクロミック化合物であり、無色のHABIは溶液、結晶の何れの状態においても紫外光照射により、二つのイミダゾール環を結ぶC-N結合が均等解裂し、発色体である赤紫色のトリフェニルイミダゾリルラジカル(TPIR)を生成するフォトクロミズムを示す。TPIRからHABIへの戻り(ラジカル再結合)反応は熱反応であり、典型的なT型フォトクロミック分子といえる。一方、分子内に二つのイミダゾリルラジカル部位を有するBDPI-2Yは、ラジカル二量化反応を起こすことなく、スピン間の多様な相互作用により特異な電子構造を有する。これまでに、π電子が非局在化した一重項開殻ビラジカル状態の物性化学に関しては十分な研究がなされておらず、新たなパラダイムに差し掛かっているが、そのパラダイムシフトを実現するためには一重項開殻ビラジカル化合物に関する知見を集約し、新たな物性発現に向けた研究を推進する必要がある。このような経緯から、本研究では一重項開殻ビラジカル状態を有するモノマーユニットから構成されるπ共役ラジカルポリマーの創製を試みた。
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Chem. Lett. 37
Pages: 694-695
10021081893
Synth. Met. (印刷中)
130004644936