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¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
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Research Abstract |
水素結合系やプロトン(水素)移動反応など,多くの化学反応過程において原子核の量子力学的性質が重要であることが見出されている。本研究では,電子核混合系を量子力学的に取り扱うため,第一原理経路積分分子動力学(ab initio path integral molecular dynamics(PIMD))法の開発,実装,および具体的応用計算を実行した。ab initio PIMD法では,断熱近似のもとで非経験的に電子状態を解きつつ(on the fly),経路積分による核の量子効果を考慮することが可能となる。本研究ではプロトン移動反応のモデルとして,1)アンモニウムクラスターイオンの最小単位であるN_2H_7^+の同位体効果,溶媒効果を考慮するために2)QMMM/PIMD法の開発,を行った。 1)N_2H_7^+の同位体効果: N_2H_7^+およびその重水素置換体の計算を実行した。平衡構造は,片方のN原子にH^*が寄った構造であり,H^*がNN間の中央に位置した構造が遷移状態となる。ab initio PIMD計算を実行すると,N_2H_7^+ではNN間の中央に緩やかなーつのピークを持つ分布となった。これは量子効果,温度効果によって,ポテンシャルの障壁を超えることが出来たためであり,実験から示唆されている内容と一致するものである。一方,N_2D_7^+では二つのピークが現れた。これは重水素化によって核の量子効果が弱くなり,障壁を完全には越えることが出来ないためである。またR_NNの期待値はN_2H_7^+で2.678AN_2D_7^+で2.687Aとなり,N_2D_7^+の方が長くなった。これは,結晶におけるUbbelohde効果に相当すると考えられる。 2)QM/MM-PIMD法の開発: 溶媒効果を取り込んだab initio PIMD計算や大規模系計算を可能とするために,QM/MM法に基づく経路積分分子動力学(QM/MM-PIMD)法を実装した。具体的にはQM/MM法の一種であるONIOM法をPIMD法に組み込み,N_2H_7^+イオンに水分子が付加したN_2H_7^+(H_2O)_Nクラスターの計算を実行した。中心のN_2H_7^+に対してMP2/6-31++G^<**>,水分子に対してPM3で評価した。N_2H_7^+だけの場合と異なり,水分子を付加することにより,中心水素の位置が大きく片寄った構造にピークが現れた。現在,水分子をさらに増やした計算を実行し,プロトン水和の量子効果やH/D同位体効果の詳細を探っている。
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