Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
平成19年度の研究を通して、人獣共通感染症原因菌として知られる病原性Yersinia (Yersinia enterocoliticaおよびY.pseudotuberculosis)の経口免疫に病原性Yersiniaが共通して産生する菌体外膜タンパクであるYadAが感染防御抗原として関与している可能性が高いと思われたことから、病原性Yersiniaに経口感染したラットにおいて腸管内でYadAに対する特異的なIgA抗体が産生されているかを検討した。4週齢のラットにY.pseudotuberculosisを経口感染させた後、経時的にラットの小腸内容物を採取した。そして菌体から精製したYadAを抗原としてウエスタンブロットを行い、YadAに対する特異的なIgA抗体の産生状況を検討したところ、ラットにおいては菌に経口感染後2週目からYadAに対する特異的なIgA抗体が腸管内に分泌されていることが確認された。さらに、ラットがY.pseudotuberculosisに経口感染したラットは、感染3-4週間目に腸管からの排菌を停止するが、このラットに菌を再び経口投与すると投与菌の腸管定着は阻止される。菌再投与時もラットの腸管内にはYadAに対する特異的なIgA抗体が分泌されていた。これらのことから、ラットにおいては病原性Yersiniaが産生するYadAは、経口免疫の感染防御抗原として重要な役割を果たしていることが明らかになった。なお、YadAを用いた経口ワクチンについて、経口免疫効果を高める適切な担体について、継続して検討中である。