Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
角膜が外傷や感染症、遺伝的疾患などにより透明性を失ったり、変成や変形により網膜に像を結ぶことができなくなった場合に、角膜移植手術が行われる。移植に用いられる角膜は、死亡後の角膜提供の意思を示している方から提供されるが、ドナー不足が大きな社会問題となっている。本研究では、角膜組織の治療法を開発することを目的とし、再生医学領域においてヒト眼球由来体性組織幹細胞を単離・培養し、臨床応用を目指した細胞ソースの探索を行った。国立成育医療センターでは、承認を受けた眼手術検体のうち、角膜、強膜、水晶体、虹彩を用いることが可能である。具体的には、ヒト小児手術検体由来組織より、間葉系細胞を分離・培養する技術を確立した。また、細胞ソースはヒト眼球組織のみならず、軟骨、骨、胎盤、臍帯等も用いた。分離培養したヒト間葉系細胞の性質を細胞表面マーカー、Gene chip (Affymetrix)を用いたプロファイリングを行い細胞の有する性格を詳細に検討した。それらのデータを利用して、これらの細胞が多分化能を有す状態を保つ培養条件、方法の確立を試みた。また、免疫不全動物への細胞移植を行い、腫瘍形成能について検討した。小児の細胞は成人の細胞と比べ、分化能や増殖能が高く、様ざまな組織や臓器への形作りが可能であると期待される。本研究によって、ヒト眼球由来幹細胞を細胞バンクに登録し、必要なときに増殖・分化させ臨床応用できるように、基礎的なデータを蓄積した。