Research Project
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
学校数学において、「文字の式」は一般性を表現できるが、「数字の式」ではそれができない、という思い込みがある。だが、数学史をみると、文字表記が充実する前では、一般性を含意して論を展開する際は「数字の式」を用いていた。本研究では、このような「数字の式」における数を擬変数と命名した。本研究の目的は数学史における擬変数の機能に焦点をあてて規範的に教材を開発し、かつ授業実践を通して「数字の式」の学習指導における擬変数の価値を実証的に示すことである。21年度は引き続き基礎研究を展開するとともに、調査研究と授業実践を行った。具体的には、1)19年度20年度に引き続き下記の3文脈における教授課題の開発行った。具体的には[1][2]を統合的にとらえ、これについては「減法の決まり」焦点を当てた一連の課題をMax Stephens(メルボルン大学)と共同開発した。[3]についても[1]と関連付けて、先行研究の中から「台形状に並んだ点の数を求める問題」が適切であることを特定した。[1]数のパターンの発見とその一般的説明の文脈[2]事象を数値表現し、関数の性質を表から読み取り式化する文脈[3]図形を対象にした問題解決において、「数字の式」を活用する文脈2)開発した「減法の決まり」焦点を当てた一連の課題を使い、小学校第4学年と第6学年を対象に調査を実施した3)「台形状に並んだ点の数を求める問題」を中学校において授業実践できるように検討した。4)「台形状に並んだ点の数を求める問題」について中学校第3学年を対象に、東京学芸大学附属大泉国際中等学校において授業実践を行った。なお、この授業はアフリカの英語文化圏7カ国から来日した数学教育関係者の一人が実践(教授言語は英語)し、擬変数に着眼した「数字の式」「文字の式」の教授課題の普遍的価値が確認できた。