Research Project
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
最終年度である本年度は、以下に示す2課題を遂行した。(1)太陽紫外線がイネの生育および収量に及ぼす影響解析 コシヒカリ部分置換系統(SL229、SL229-B2-F2系統)を材料に、これまでの宮城(大崎市鹿島台・研究科圃場)、鹿児島(鹿児島市・鹿児島大学圃場)に加えて、福島県(梁川圃場:福島JA伊達みらい協力)の3箇所で紫外線環境影響評価試験(生育・収量調査)の3年目を実施した。また、生育時において、葉内細胞中のDNA上に生成しているシクロブタン型ピリミジン二量体(CPD)の蓄積量(Steady state CPD level)の動態解析も行った。その結果、CPDの蓄積量の変化に関しては、予想通り、CPD光回復酵素の活性の低下しているSL-229系統の方がコシヒカリよりも常にCPD量は高く蓄積していた。また宮城、福島、鹿児島の栽培地域によるCPDの蓄積量の違いに関しては、福島、鹿児島では、宮城県よりも高い傾向にあったが、福島と鹿児島では有意な差異は認められなかった。この結果は、サンプリング時の天候による影響と考えられた。収量調査に関しては、今年でもこれまでに得られている結果と同様に、コシヒカリと比較してSL-229では乾物重、1,000粒重、穂数の減少、さらには玄米サイズの減少が顕著に認められた。またさらに、鹿児島県の収量は、宮城、福島と比較して低いことも分かった。以上の結果から、今日の自然光環境下においても、太陽紫外線はイネの生育に影響を及ぼしている可能性が強く示唆された。(2)CPD光回復酵素組換え体イネを用いた環境影響評価 これまで生物多様性試験等を実施し準備を進めてきた、イネ・ササニシキのCPD光回復酵素遺伝子をイネ・ササニシキに導入し、高い紫外線抵抗性を獲得した組換えイネを用いた隔離圃場での野外環境試験の実施が、11月2日付けで承認された。それに伴い、隔離圃場近隣の住民を対象にした住民説明会を実施し、住民の理解を求めるとともに、隔離圃場の整備を行った。
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