Budget Amount *help |
¥3,400,000 (Direct Cost: ¥3,400,000)
Fiscal Year 2008: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2007: ¥1,800,000 (Direct Cost: ¥1,800,000)
|
Research Abstract |
本研究は,株式市場の安定化を図る制度であるサーキットブレーカー(以下、CB)制度の制度設計を分析することを目的とする。2008年9月に金融危機が発生し,東証・大証を含む世界中の市場でCBが発動された.我々は各市場でのCBの具体的ルールと発動実績をまとめたウェブサイトを構築している.実際のCB発動があった際にこのサイトに対してどのようなアクセスがあったかを分析し,CBに磁石効果があるかどうかを分析した.この分析では,今回の発動では必ずしも磁石効果があるとは言えないという結論を得た.しかしこれは,今後も磁石効果が生じないことを証明するわけではない.次に,高頻度でCBが発動したモスクワの市場における値動きとCB発動の関係を分析した.まだデータが不十分で明確な結論は得られていないが,統計的分析が可能な程度にデータが得られたことは,今後のCB制度設計に有益である.さらに,ニューヨーク証券取引所,大証,韓国証券取引所のCB制度の変遷を分析した.この分析の枠組みとして,複製子・相互作用子という進化経済学の基礎概念を用いた.その結果,取引主体,取引所,制度設計担当者という3種の相互作用子を想定できること,取引停止,変動幅・率,停止時間などの複製子があり,それらがなにを契機にどのように各取引所で引き継がれ,また,変異したかを示す「系図」を作成することができた.この分析を通じ,CBのような制度は,ミクロである取引主体の行動,マクロである市場の動きをつなぐ,「メゾ」として位置づけるべきであり,制度の形成・変化,そして,有効な設計を行うためには,ミクロメゾマクロ・ループの分析をする必要があることを示した.このような研究を通じて得たデータ,および,CB制度への理解に基づき,計画通り大証の制度設計担当者へのインタビュー調査を行った.しかしこの調査は守秘義務があるため,内容・結果の公表は控える.
|