Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2009: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
Fiscal Year 2008: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2007: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Research Abstract |
本年度の研究成果としては,以下の2点が挙げられる。 まず1点目は,九州方言のテ形音韻現象に関するシミュレーション研究を実施したことである。昨年度までも,テ形音韻現象を創発させるプログラムを開発してきたが,何をエージェントとするか,確率論的な手法が本当に有効か等の諸問題が見られ,完全に人工社会・人工生命分野のアプローチを取り入れることはできていなかった。今回開発したプログラムでは,それらの諸問題を可能な限り解決し,加えて社会言語学的な要因である性別・世代,及びそれらに対応した言語受容差を組み込んだ。それによって,新たな地理的分布も観察され,テ形音韻現象をシミュレートした“人工・言語社会"の構築に一歩近づいたのではないかと考えられる。ただ,今後はさらに多くの社会言語学的要因を組み込んでいくことが課題であり,さらに根本的な問題として,このようなシミュレーション研究を代表とする構成的アプローチが方言研究に本当に有効かどうかについても議論する必要があろう。 2点目は,3年間の本研究の成果を,研究成果報告書として作成し,頒布したことである。本報告書の内容としては,まずフィールドワークによって得られたテ形音韻現象のデータ,及びその記述・分析を行っている。次に,構成的アプローチとして,テ形音韻現象の理論的研究を行っている。具体的には,テ形音韻現象の特殊な地理的分布,及び言語接触によって生じたテ形音韻現象の特別な方言パターンを扱っている。さらに,上述のシミュレーション研究についても記述している。ここでは,シミュレーションの実験結果,及びその解析結果を掲載しているだけでなく,構成的研究の方法論も示している。現在までの方言研究では,構成的なアプローチは皆無であるため,本報告書は今後の一つの研究指針となると考えられる。言うまでもなく,本報告書は様々な研究者に頒布し,評価・批判を仰ぐ必要があり,それによってさらに構成的研究が進展するものと考えられる。
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