Research Abstract |
(1)研究の目的・方法:前年度の質的調査で抽出された慢性疾患患者の病気認知およびその対処に関わる言説から質問文を作成し,KJ法により概念妥当性および内容的妥当性を確認して作成された「慢性疾患患者のための病気対処尺度」とQOL尺度を同時測定し,尺度構成および概念モデルの妥当性を検討した。(2)調査対象者:糖尿病を主とする慢性疾患患者(有効ケース数115:男47名・女68名,平均年齢62.77(SD=11.426)歳,レンジ29-88歳)。調査期間:2008年10月〜2009年2月。(3)調査内容:病気対処質問票およびSF8-QOL。(4)結果の概要:(1)病気対処尺度の探索的因子分析(主因子法・バリマックス回転)の結果,最適な6因子が抽出された。質問項目内容から,それぞれ「病気受容」因子(7項目構成,寄与率10.3%,α=.74),「治療の恩恵発見」因子(8項目構成,寄与率9.4%,α=.75), 「症状の情緒的評価」因子(3項目構成,寄与率7.6%,α=.78),「遺伝性帰属」因子(2項目構成,寄与率6.7%,α=.85),「防衛的病気評価」因子(3項目構成,寄与率6.0%,α=.61),「自己原因」因子(2項目構成,寄与率5.1%,α=.63)と命名された。(2)性別,治療歴,SF8-QOL変数などの関連変数の分析から,「病気受容」「治療の恩恵発見」「症状の情緒的評価」の3因子とSF8-QOLのSF(社会生活機能)の間に5%水準で性差が認められ,男性が女性よりも有意に高い得点を示した。さらに,相関分析では治療歴と年齢,SF8-QOLのBPとの問にそれぞれr=.29,一.23,年齢とSF8-QOLの3変数(PF,BP,PCS)との間にそれぞれr=-.19,-.20,-26,「病気受容」と「治療の恩恵発見」との問にr=.43,「症状の情緒的評価」とSF8-QOLの5変数(VT,SF,RE,MH,MCS)との間にそれぞれr=.30,.22,.26,.24,.28の有意な相関係数を示した。以上の結果から,本尺度を今後慢性疾患患者の病気対処を測定する尺度として利用できる可能性が示された。
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