Research Project
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
本研究の目標はヒト細胞内におけるDNA二重鎖切断の修復の過程を明らかにする上で、今必要なものは、ゲノム上に部位特異的に同調的にDNA二重鎖切断(DSB)を導入しその修復過程の経時変化をモニターすることができる系を確立することである。ヒト培養細胞HeLaS3細胞およびヒト正常リンパ球細胞を用いて、制限酵素BamHIにより生細胞中でDSBを導入させ、その修復過程について解析を行った。今年度は、おもに制限酵素により導入されたDSB部位のヒトゲノム上での位置の特定を行うことを目標として解析を行った。DSB末端に相補的な末端を持つ、ビオチンラベルしたオリゴDNAによりキャッピングを行い、ストレプトアビジンビーズにより回収してDSB末端の塩基配列を決定した。その結果、ヒトゲノム上で約200カ所の高頻度でDSBが入る部位を特定することができた。その中でも特に頻度が高かった部位について、クロマチン免疫沈降法を行った。DSB末端プールからDSB依存的に特定領域を検出することができたが、修復タンパク質に対する抗体を用いた、免疫沈降産物からのクロマチン免疫沈降法特定領域の検出にはいたらなかった。さらに検出条件の検討を行うことにより、改善可能だと考えている。逆に特定部位にこだわらず、全ゲノム上のDSB末端の濃縮方法を確立したことからゲノムワイドなDSBの分布とゲノム上の構造あるいは様々な染色体上の蛋白質の分布との比較が可能になった。ゲノム安定化における脆弱部位の特定や、今後、この手法を用いてゲノム安定化に寄与するタンパク質とその修飾状態等の要因究明に多いに貢献できると考えている。
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