Research Project
Grant-in-Aid for Challenging Exploratory Research
様々な状況下に生育する樹木個体について、樹冠における葉の受光量の幅を計測することで、その個体の光環境変化に対する可塑的反応を定量化し、樹種が持つ光利用戦略を明かにすることが本研究の目的である。生育地や繁殖サイズおよび更新特性の異なる樹種ごとに、個体が生育する光環境と個体サイズが異なった場合の反応を見るため、本研究では、九州大学北海道演習林、福岡演習林、宮崎演習林における数種の高木種個体の林床個体から林冠個体までについて、樹冠内の葉における光環境と葉の生理的特徴を調査する。このうち、本年度は下記の作業を行った。調査個体の選定と計測昨年度に引き続き、北海道演習林、宮崎演習林の固定試験地などにおいて、調査対象個体を選定し、サイズを計測した。また一部の個体については、開花結実の有無を観察した。登華用ロープ設置と計測樹冠内の光環境計測と葉の採集のために樹冠への登攀を行う必要がある個体について、調査時に登攀用ロープを迅速に設置するためのスローラインを掛けた。これら個体について樹冠最上部と最下部の光環境を、センサと光量計測フィルムを用いて計測した。これらの結果、高木種の成長段階においていったん上がった樹冠最暗部の光量が最大樹高に近づくにつれ再び低下する傾向など興味深い知見を得た。昨年度に引き続き北海道演習林においてマイマイガの大発生が起こり、選定個体の葉が被食により減少したため、樹冠内光環境の計測は行ったが、種毎の生活史戦略や更新特性との関係仮説の検証にいたる精度は確保できなかった。しかし本研究期間で得られた樹冠内光環境計測の方法論と知見は樹木の光利用戦略を明らかにする上で有益なものと考えられる。