Research Abstract |
心肥大や心不全の際の心臓線維化におけるCCN2の役割を,とくにBNPとの相互作用の観点から検討した。ラット腹部大動脈縮窄による圧負荷肥大心では,CTGF mRNA発現が増加し,procollagen type 1 mRNA発現量(0.583,p<0.001),左室stiffness係数(左室拡張能の指標,r=0.720,p<0.001)ならびに心臓線維化率(r=0.608,p<0.01)と有意な相関を示した。次に,CTGF mRNA発現量は,BNP mRNA発現量(r=0.645,p<0.001)と相関したが,一部の心臓ではCTGF mRNA発現量がBNP mRNA発現量に比し,不均等に多いものがみられた。このような心臓では線維化の程度が著しく強く,CTGF mRNA発現量のみならず,CTGF/BNP mRNA比は肥大心における心臓線維化レベルの決定因子であると推測された。ラット新生児培養心筋細胞において,CTGFはprocollagen type I遺伝子の転写を活性させ,同mRNA発現,蛋白量を増加させた。また,CTGF mRNA発現量はBNP添加により有意に減少し,BNPはCTGF発現を抑制する作用を有した。圧負荷肥大心における心臓線維化では,CTGFが線維化促進に,BNPが線維化抑制に働き,拮抗作用を示した。肥大心において,CTGFがBNPに比し不均等に多く発現すると著しい線維化と左室拡張能の低下を来たすことが判明した。 次に,CTGFが心不全患者のバイオマーカーになるかいなかを検討した。血漿CTGF濃度は,心不全のNYHA分類による重症度,過去の心不全歴,心エコーにおける左室拡張末期圧指標であるE/E'(r=0.593,p<0.05),血漿BNP濃度(r=0.395,p<0.01)と有意な相関を認めた。さらに,心筋生検標本で心筋細胞におけるCTGF免疫組織染色の程度を線維化レベルを検討すると,有意な相関を認めた(r=0.638,p(0.001)。以上から,CTGFは心臓線維化を担う強い作用を有し,診断的応用が可能であるとともに,心不全、心臓線維化の治療標的分子になることが強く示唆された。
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