Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では、高齢者における生活機能向上および転倒予防のための複合課題トレーニングの開発を目指し、2007年度は高齢者における複合課題能力低下と運動機能および転倒状況との関連性について分析した。高齢者では静的バランス・動的バランスともにdual taskでは有意に低下した。また、静的バランスではsingle task、dual taskともに転倒群と非転倒群との間に有意差はみられなかった。一方、動的バランスではsingle task、dual taskともに非転倒群より転倒群で有意な低下が認められた。このことから、動的バランス課題ではdual taskだけでなく、single taskでも十分に転倒予測が可能であることが示唆された。さらに2008年度は複合課題トレーニングが高齢者の運動機能や生活機能に及ぼす影響を検討した。対象は施設入所高齢者23名とし、不安定傾斜板を用いての週2回の複合課題トレーニングを9週間行った。その結果、不安定板やバランスマット上での立位保持時間や最大随意重心移動距離などの運動機能に有意な効果がみられた。さらに、不安定板の動揺量の周波数解析を行った結果、練習を重ねるにつれて低周波成分は減少傾向を示した。これらのことから、高齢者に対する不安定板を用いての複合課題トレーニングは、不安定な支持面で姿勢を修正・保持する能力や、素早く姿勢を調節する能力の向上に有効であることが示唆された。