Project/Area Number |
19730146
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Economic theory
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
小川 一仁 Osaka Sangyo University, 経済学部, 准教授 (50405487)
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Project Period (FY) |
2007 – 2008
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2008)
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Budget Amount *help |
¥1,680,000 (Direct Cost: ¥1,500,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2008: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
Fiscal Year 2007: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 経済実験 / 多市場接触 / 意思決定 / 囚人のジレンマ / 調整ゲーム / 行動分析 / しっぺ返し戦略 / トリガ戦略 |
Research Abstract |
本研究課題を遂行することで得られた研究成果は以下の通りである。 1) 研究課題採択以前から実施していた多市場接触実験の総括 2) 割引因子を考慮した多市場接触実験の実施と分析 3) 囚人のジレンマ以外のゲームから構成される多市場接触実験の実施と分析 1)について 多市場接触の経済実験に関する研究は2005年から開始された。そのため研究課題採択以前から、データ収集を行っていた。そのため、本研究課題採択時にはかなりのデータが集まっていた。そこで、採択後速やかに実験データの分析を行い、ワーキングペーパーとしてまとめ、学会報告を行った。研究機関終了後の現在では、学術雑誌に投稿する準備を整えている。 この研究では多市場接触が長期的に継続するとき、プレイヤの行動はどの要素に影響を受けるか、プレイヤが相互協力を実現するにはどのような戦略が有効かを分析した。「協力しにくいゲームに協力しやすいゲームをリンクすると、協力しにくいゲームにおいて}協力が促される」というバーンハイムとウィンストンの命題~(Bernheim andWhinston,1990)はこれまで厳密に検証されてこなかった。われわれは経済実験を用いてこの命題の妥当性を検討したが、支持されないばかりか、逆の結果になった。 さらに、われわれは、ゲームの数ではなく、ステージゲームにおける行動集合の要素の数が協力率に影響する要因であることを追加実験によって明らかにした。すなわち、利得構造が同じであっても、ゲームを追加すると行動集合の要素の数が増加するために、協力率は有意に減少するのである。また次に、ゲームを追加する際、行動集合の要素の数が同じになるようコントロールして実験すると、利得構造が協力しやすい場合の方が協力率は有意に上昇することが明らかになった。以上から、バーンハイムとウィンストンの命題が「われわれの」実験で支持されない理由は、行動集合の要素数の増加によるマイナスの効果が、利得構造の変化によるプラスの効果よりも強いためであると説明することができる。加えて、プレイヤが相互協力を達成するための実践的な戦略としては多市場接触に見合う形で修正されたトリガ型の戦略よりも、同様の修正を施されたしっぺ返し型の戦略のほうが有効であることを見いだした。 2)について 2007年12月、2009年3月に広島市立大学で多市場接触に関する経済実験を実施した。被験者募集などは高橋准教授に依頼し、実験を実施した。この実験はBernheimらが提出した多市場接触理論(無限回繰り返しゲーム理論に依拠している)を厳密に検証するためのもので、本研究の柱の1つである。実験自体は、1)と異なり、割引因子を客観的に統制したものだった。2006年度から収集したデータに加えて、今回の実験で分析に必要なデータの収集がおおむね終了した。 暫定的な分析では、研究成果1)の蓄積から、プレイヤはステージゲームで実質的に選択可能な行動の数と利得構造に影響を受けることが予想され、加えて今回は割引因子の高低にも影響を受けると予想された。暫定的な分析では、これらの予想の多くが実現していることが分かった。 3)について 京都産業大学でデータを収集した。具体的には、繰り返しゲームの状況で2人のプレイヤが囚人のジレンマと調整ゲームを同時にプレイする時の囚人のジレンマの協力率と囚人のジレンマのみをプレイする時の囚人のジレンマの協力率を比較し、調整ゲームの存在が囚人のジレンマの協力率にどのような影響を与えるか分析した。理論的には、調整ゲームを加えたとしても囚人のジレンマの協力率には全く影響しない。しかし、分析の結果、調整ゲームの存在は囚人のジレンマの協力率を高めるものではないどころか、プレイの初期には協力率を低めることが明らかになった。複数のゲームをプレイすることでプレイヤの意思決定にかかる費用(心理的費用)が高くなり、囚人のジレンマにおいて最適反応を取る可能性が高くなってしまったのである。
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