Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究では、次世代燃料電池として期待される固体酸化物燃料電池を低温で作動させる新規プロトン伝導性材料の開発を目的とする。遷移金属をドープしたペロブスカイト型酸化物について、そのプロトン伝導性の発現に注目して検討を行ったところ、SrZr09Ru0103について興味深い実験結果が得られた。SrZr0.9Ru0.103は、固相反応法により調製した。湿潤水素中および酸素中の導電率を直流4端子法により測定した。水素濃淡電池(一定の水蒸気分圧の下で水素分圧比を変えたセル)および水素雰囲気での水蒸気濃淡電池(水素分圧を一定にして水蒸気分圧を変えたセル)によりイオン伝導種の同定を行った。遷移金属ではないドーパントを用いた場合(例えば、SrZr0.9Y0.103)の水素中の導電率は、600℃で4×10-3 S/cm程度であるが、SrZr0.9Ru0.103ではそれよりも約5倍大きな導電率が観測された。この値はペロブスカイト型プロトン伝導体の中でもっともプロトン伝導性の高いバリウムセレート系の値に匹敵する。一方、濃淡電池によるイオン輸率の測定では、イオン輸率がほぼ1、酸化物イオン輸率がほぼゼロであるという結果が得られ、導電種がプロトンであることが示唆された。以上の実験結果は、Ruをドープしたストロンチウムジルコネートが、非常に高いプロトン伝導体であることを示している。しかし、一方でIR測定によっては、プロトンを観測することができず、観測された高い導電性がプロトン伝導によるものかについては疑問が残る。以上より、本研究によっては、SrZr0.9Ru0.103が水素中で高い導電率を示すことを見いだし、その導電種がプロトンである可能性が示された。
All 2007
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