Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究の目的は、脳転移モデルを用いて肺癌の難治化・予後悪化の要因である脳への遠隔転移形成を惹起する要因の検索を行い、その転移因子を分子標的とした新規治療法を確立することにある。ヒト肺癌細胞株PC14らin vivo selectionを行い、高脳転移株PC14Brを作成し、親株をコントロールとした高脳転移株PC14Brの遺伝子発現プロファイルをcDNAマイクロアレイにより取得、肺癌脳転移に特異的な分子であるTKS-HBS3分子に着目し機能解析を行っている。TKS-HBS3は正常臓器での発現はほとんどなく、非小細胞肺癌において原発巣と同様に特異的に発現していることをRT-PCRにて確認し、Multiple Tissue Northernでも、同遺伝子が正常脳には発現がないことを確認した。加えて、TKS-HBS3の強制発現安定株を作成し、これを強制発現したCos7細胞は、糸状偽足を有して多層性に細胞増殖を行い、悪性化することが観察された。Matrigel Invasion AssayによりTKS-HBS3の浸潤能について確認したところ、TKS-HBS3を強制発現させたCos7細胞はmock比較してその浸潤能が著しく上昇しており、癌細胞株のTKS-HBS3をRNAiを用いてノックダウンするとその細胞の浸潤能は低下した。以上よりTKS-HBS3が肺癌脳転移において特異的に重要な役割を担っている可能性が示唆され、今後の動物実験への応用を考えて現在高脳転移株であるPC14BrにおけるTKS-HBS3の機能について解析を行っており、今後予後不良とされる脳転移抑制への解明が期待される。